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グリムの村はかなりの辺境で、村へたどり着く前にいくつかの馬車を乗り継ぐ必要がありました。
三回目の乗り継ぎ場所であるヴォルフの町に到着したのは、日の傾く頃でした。今日はここで一泊するそう。どうやら、経路であった橋の一部が崩落してしまったらしいのです。
別の通行ルートの手筈に少し時間がかかるらしく、御者のお爺さんは、ごめんねぇお嬢ちゃん、と言って、私に飴玉をくれました。ウィスタリアの花弁を閉じ込めたというその飴玉は、舐めると確かにふわりと花の香りがして、なんだかふわふわとした気分になれました……って、だから私は子供じゃないのに!
ともかく、そんなこんなで私はヴォルフの町にしばらくとどまる事になりました。
ヴォルフの町は観光の名所です。白塗りの壁と赤い屋根の家は、そのコントラストが素晴らしいですし、近郊の自然も豊かだそうです。初夏の頃になると美しい群青色のセントレアの花が一面に咲く原っぱが特に有名だそうでした。ぜひ見てみたいと思いましたが、今はもう季節が過ぎてしまって見る事はできないそう。
私はチェックインしたホテルの部屋のベッドに横たわりました。馬車に揺られる事およそ九時間だったんですよ!身体が鉛になったみたいに疲れてしまって。けれどそれ以上に、このヴォルフの町に対する興奮があり、なかなか寝付けそうにもありません。
馬車の中からでも、この町がすごく魅力的なんだって分かったんです。きらきらしたアクセサリーや、可愛らしい小物、繊細な意匠のなされた魔法のアイテムが、ショーウィンドウに並んでいて!露店では素朴なお花の髪飾りやペンダント、絵画が売られてたんです。一つ一つが手にとってまじまじと眺めてみたいような、そんなものがたくさんあって。
明日になったら観光してみよう。そんな事を考えているうちにだんだんと眠くなってしまいました。
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