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「……何ですか、これ」
その紙切れはどうやら日記の一部みたいでした。この日記の著者は八月の五日に、旧館で何か良くないものを見てしまったようです。しかも、闇の魔法なんてものがあるとかいう噂まで。
気味が悪い。私は紙切れをポケットに入れ、疲れを癒すためベッドに横になろうと……する前に、椅子に座り、備え付けの紙とペンをとります。文書を書き終えたら、ミザリーを起こします。
「ミザリー、ちょっと助けてちょうだい」
なぁに、あたし疲れてるのに。不機嫌そうに彼は言います。
「ここ、思ってたより危険なところかもしれないの……少し、ロレッタ様に相談したくて。お願い、ロレッタ様にこれとこれを届けてくれる?」
仕方ないわねぇ。このあたしをこうも顎で使えるのはあんたくらいよ。ミザリーはそう言って、渡した二つの紙を受けとります。
紙の一つは先ほどの日記の一部。もう一つは、ロレッタ様への相談をしたためた手紙。日記の一部の内容が内容なので……杞憂なら良いのですが。
「……」
ふと、嫌な可能性に気付きます。前の住人が遺したものが、他にもこの部屋には残っているのではないのだろうか。いや、それに……もし私の働く場所が、その旧館とやらだったら?
不安です。拭いきれないほどに。私はここで、うまくやっていけるのでしょうか?ローア家は、いったい何をしているのでしょうか……?
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