18 ページ19
「お嬢ちゃん、そろそろ準備をしといておくれ。十時に出発するから」
御者のお爺さんの言葉に従って、ホテルをチェックアウト。荷物をまとめて、馬車に乗り込みます。
少し雨が降ってきていたので濡れてしまいました。ちょっと寒いです。ミザリーは羽が濡れたのが相当癪に障ったらしく、ぶつぶつと文句を言っていました。
「そう言わないで、ミザリー……御者様、グリムに到着するのはどのくらいになりそうですか?」
「本当なら三時頃には到着するはずなんだけど、今回は違うルートで行ってるから……このペースだと、そうだねぇ。五時か、六時くらいになりそうだよ。ごめんねぇ、お嬢ちゃん」
「いえ、大丈夫ですよ。天候のせいなんですから、御者様が謝る事ではありませんもの」
とは言いますけれど、やっぱり何時間も馬車に揺られるのは苦痛です。舗装の雑な道を行くものだから、ガタガタと揺れるんです。クッションを敷いてなかったら、腰が痛くて動けなくなっていたかも。
けれど、退屈ではありませんでした。窓の外から見える風景は、まるで童話の中からそのまま飛び出してきたみたいに牧歌的で美しかったんです。木の枝にとまっている小さくて可愛いスワローだとか、色鮮やかに咲き誇る、名前も分からない花だとか。きっと、雨でさえなければそれらはもっと素晴らしい光景だったのでしょう。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ