轟兄の片割れ依存.【MHA】 (ページ10)

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愛情その九ページ10

「クソ親父が。帰ってきたんだ？」

「お前を相手している時間は無い。……俺は焦凍に用があるんだ。焦凍はどこにいる？」

「風呂だ。まさか入浴中まで邪魔するってこと、しねえよな？親父」

首を糸の切れた傀儡のように傾げたA。
それによって無表情の彼の目元に、黒い影が落ちる。

「しねえよな？親父」

二度言えば父親の顔は憤怒に顔を歪め、間合いをたった二歩で詰めて、Aを見下すように否物理的にも見下ろして皮肉をこぼした。

「お前には関係ないだろう、…この…出来損ないの“弟依存”が！」

その台詞に反応しピキっとAの頬に血管が浮き出たのを、父は大袈裟に舌打ちをした。

「クソ親父が！」

「──────兄貴？」

父親に掴みかかろうとAが手を伸ばした瞬間、背後からかかった声に咄嗟に振り返る。
めでたい紅白の髪を濡らした、己の命よりも大切なやつがそこに立っていた。

「焦凍………っ」

「焦凍ォォ！待っていたぞ！」

「ﾁｯ、クソ親父……帰ってたのか」

父の声だけで顔を大きく歪めた弟を、Aは落ち着かせるために駆け寄ってそっと抱き締める。
自分が父と焦凍との壁になるように、前からそっと。

「A？なんの真似だ？」

「…っ、焦凍ボクと部屋に戻ろう」

「…ああ」

「焦凍！まだ話は終わってないぞ！」

「テメェと話すことなんかねえよ」

焦凍は乱暴に吐き捨てるとAの手を取り、父の横を早足で通り過ぎる。
視線も合わせず、顔も上げず、ただ兄の手だけをしっかり握ってその場から風の如く立ち去った。

「焦凍ォォオオ！！」

父は何故か弟だけの名をずっと叫んでいた。

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「兄貴、大丈夫か？」

「ん？大丈夫だよ？」

「親父に酷いこと言われたんじゃねえのか？」

───────【“弟依存”が】

「いいや？なんにも」

「本当か？」

「本当だ。嘘つく意味もねえだろ？」

「そうか…良かった」

ほっと小さい溜息をついた弟の額に、不意に唇を押し付ける。

「……兄貴？」

「可愛いカワイイ…ボクの焦凍
お前のことは兄ちゃんが、命にかえても守るからな」

もう一度、額にキスを落とす。

「絶対に…離さないよ、焦凍」

ボクの可愛い、ボクだけの焦凍──