轟兄の片割れ依存.【MHA】 (ページ9)

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愛情その八ページ9

「ねーちゃん」

「あらどうしたの？A」

「今日親父…帰って来ない？」

「うーん…多分。ってまた濡れっぱなしで」

風呂上がりに濡れた髪にタオルを被るだけの雑なスタイルに、姉は苦笑して髪を代わりに拭き始めてくれた。

「悪い、めんどくさくて」

「傷むよ？せっかくの綺麗な赤毛なんだから」

「綺麗じゃねえよ…！
アイツと同じ髪ってだけで腹が立つ…」

「A〜そういうこと言わないの」

拭いてくれていた優しい手つきは、諌める様に突然乱雑になる。
お陰様で赤毛は乾いたがボサボサだ。

「いい？A」

「うん」

「あなたは焦凍の一番近くにいてあげられる子だから、側にいてあげてね」

「うん」

「「絶対に手を離さないように」」

二人の声が重なる。
はにかんだ姉の笑顔につられて、Aもニッと笑うと「風呂入る」と焦凍が顔を覗かせてきた。運良く話は聞かれていなかった様で、弟はすぐに風呂場へと足を運んでいった。

「そんじゃボクは部屋に戻るな」

「はーい。ちゃんと髪の毛乾かしてね」

「ん、おやすみ。冬美姉ちゃん」

「おやすみなさいA」

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自室に向かう廊下に、こぼれた月明かりに足を止めて空を仰ぐ。

「綺麗な月だな、今日は」

まん丸に肥えた黄色い月に目を細めていると、月明かりで照らされていない廊下の奥から、黒い影が揺らめいた。
そしてその影は次第にこちらに近付いてきて、月明かりの光の筒の中にのっそりと姿を現した。

「あっ………」

心の底の黒い沼に波紋がたつ。
見たくもない、心の底から恨むそいつの顔に体が強ばり、胸の奥が熱くなる。

「なんだ…お前か。」

「………ッ帰ってたのかよ、

────クソ親父」