轟兄の片割れ依存.【MHA】 (ページ17)

今日:1 hit、昨日:10 hit、合計:26,436 hit

愛情その十六ページ17

「梅雨ちゃんの脚力すげえな、さすが蛙」

「Aちゃんあまり動かないでちょうだい。落ちちゃうわよ」

「お、悪ィ」

　人生で初体験だ。
女の子の脇腹に抱え込まれるなんて。いや女の子のお腹にしがみつくなんて(？)か。
しかもこれで男三人抱えて飛んでんだもんな。

──梅雨ちゃん、強し

「……やっと抜け出せた」

　緑谷の脱出作戦は見事、成功。
ボクは何もしないで梅雨ちゃんに抱えられてただけだけど、成功。
　うん、成功

「それじゃあ俺は焦凍探しに行くから」

「え、行っちゃうの」

「ここで相澤先生の観戦をするより、焦凍を探す方が俺にとっては有意義なモンなんだ」

　悪いな、と付け足してボクは緑谷達から離れて走り出した。
焦凍がどこにいるかは検討はつかないが、恐らくここに向かっているだろうから走れば──

「うおッ！？」

「お」

　曲がり角からバッタリと。
いや少女漫画の出だしかよ、と思いつつもまあ確かに出会えてラッキーなやつがそこにはいた。

「兄貴ッ、無事だったのか」

「焦凍！…よかったァ、焦凍が無事で」

「兄貴こそ無事でよかった」

「素直かよ好き」

「さすがに今ふざけるのはやめろ、兄貴」

「ごめんなさい、怒らないで」

　弟に抱き着きたい欲求を押さえていると、焦凍が突然ボクの手を引き、“行くぞ”とボクが走ってきた道を辿るように走り始める。
　え、戻るのかよ。走った意味ねェ

「焦凍、なんでそっちに向かうんだ？」

「さっき敵から話を聞いた。今回の雄英高校侵入の本当の狙いを」

「どうせ氷漬けとかにしたんだろ……、ンで？敵さん方はなんて？」

「本当の狙いは、」

　
　────オールマイトだ

「え、何それ…身の程知らずかよ」

　結構マジでツッコんだ。
だってあの平和の象徴である、オールマイトが狙い？つまりは殺すということ？そんな身の程知らずがのこのこと。

　──でもまあ、とある噂が本当ならば身の程知らずとは言い難い

「なあ、焦凍……」

「なんだ」

　走り続ける弟の背中を眺めながら、俺は空気に溶けてしまいそうな、小さな声で呟いた。

「オールマイトって“まだ”昔みたいに強いのかな？」