轟兄の片割れ依存.【MHA】 (ページ12)

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愛情その十一ページ12

揺られるバスに合わせて紅色の頭が揺れる。

「わあ、Aうとうとしてんじゃん」

「赤いから余計シュールなんだよな」

「寝顔めちゃんこ可愛いで…」

「麗日さん、落ち着いて…」

船を漕ぐAの隣に座る、焦凍は兄と同じように大きくは揺れていないがうたた寝をしていた。

「うわお…イケメン兄弟の寝顔…」

「レア過ぎる…写メっとこ」

「盗撮ですわよ！それは！」

「しーっ、二人が起きちゃうわ」

スマホを構える芦戸を良心からとめる八百万に、人差し指を立てる梅雨。

「ごめんなさい」

「反省いたしま」

謝罪に頭を下げた芦戸に続き八百万が謝ろうとした、その時

［ｶﾞｺﾝｯ！］

バスが補整の悪い路に躓き、縦に大きく揺れた。

「ッで」

「うﾞ」

揺れと同時に後ろの座席の方から聞こえる鈍音と、唸り声に皆が後ろを振り返る。
するとその座席には揃って額を押さえる轟兄弟がいた。

「く、そ…いッたァ……」

「…ッ、なんだよ…一体」

「おいおい、デコ打ったのか〜？」

「しかもそろってかよ。大丈夫か？」

「大丈夫じゃねえよ、寝てたってのに…」

ぶすー、と口を尖らせそっぽを向くA。
不貞腐れるのも当然だ。こっちは寝不足で、演習先までの移動時間で仮眠しようと寝てたのに、額の鈍痛で目を覚ますなんて──最悪の目覚めだろう。

「結構すごい振動きたけど、相当強くぶつけたみたいだね？大丈夫？」

「大丈夫だ、耳郎。それより悪いな、音楽聴いてたろ？邪魔したか」

「ウチは大丈夫だよ、気にしないで」

「オイ」

次郎の隣が振り返る。
眉間に深く皺を刻んだ爆豪が、目を更につり上がらせていた。

「どうした？爆豪」

「どうした？じゃねえわ。テメェの弟が頭打ったせいで振動凄かったんだぞ」

「嗚呼びっくりしたんだな。ほら焦凍、爆豪に謝れよ」

「………揺れたバスが悪いんだろ」

「アﾞァ！？」

「落ち着け爆豪！ほら轟はマイペースなんだし、許してやれよ！な？」

慌てて遠くの席の方から切島が止めにはいる。
だが更に熱がつきそうになっていた爆豪や、騒ぎ立てる場を鎮めたのは立ち上がった相澤先生だった。

「お前達、演技前に騒ぐんじゃねえ。
ほらさっさと降りて、施設の中に入れ」

「お、助かった。…って顔怖いぞ、爆豪」

Aがボソッと呟いたそれに、過敏に反応した爆豪は物凄い形相でAを睨んだのだった。