雪 起 こ し【我妻善逸】

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*



沈黙。


…店員よ、辞めてくれないか。バイトだからって大雑把な仕事をするのは


お陰でこんな空気だよ。折角の肉が美味しくなくなってしまうじゃないか


ただでさえ特別な物だと言うのに。


いや別に味が大事って訳ではないけど、単純に。彼に買って貰えた物って言う事実が大事だから



「あー…あ、え、えっと。」



しかしだ。彼の言葉に困惑してしまい、考える事もなく急いで包みに手をかけてしまった私にも非があるのではないか


もし私が頑張れば。頑張ることが出来たなら
かの栗花落先輩の様に、彼が持ち上げた時の肉まん餡まんの重さの違いによって生じる手のブレや生地の傾きを見られたのだろうに。


…頑張れなかった。


栗花落パイセン。その目をちょっと分けてください。


あ待って今の発言めちゃくちゃサイコパスだ



「我妻君…？」
「餡だ…。」



残念そうな表情…ではない。むしろ笑顔、満面の笑みで笑ってる。


…さっきの私より幸せそうだ。


そう言えば…彼は新学期の自己紹介の時。甘いものが好きだと言っていたっけ


成る程。彼にとってはこの間違いはご褒美って訳か。



「はい。」



すると、彼は何を思ったか。彼は手に持っていた餡まんの片方を私に差し出した



「…えっ。」
「なんか…俺ばっかりズルいでしょ？」



ズルくないズルくないズルくない！


むしろ貴方損してるんだよ？10円ほど。むしろ私の方がズルいのよ！？


今すぐコンビニに言ってレシート見せて取り替えてもら……


ああああああああ真っ二つッ！！


そして片方は私に向けられているッ！！



「あ、あえ、あ、……」



言語が出てこない。
こう言う時は何語を話せば良いのだっけ。バスク語？アヤパネコ語？

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