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なんだかんだ、Aの後ろに乗せてもらうのは初めて。
登下校は電車、家は近所、遊びに行く時は2人でチャリ漕ぎながらどっか行くのが好きやったから。
「康二、これ」
「ん?あ、おーきに」
「あげる」
ちょっと重めのヘルメットを渡される。
白地にオレンジのラインが入ってて、なかなか可愛い。
え、あげる?
「えーの?」
「うん、お前用」
「そっ、かぁ」
ふぅん、俺用かぁ。そうかぁ。
なんや、今日は朝っぱらからAの特別めっちゃ感じる日やなぁ、良い日やなぁ。
でも、ここでちょっと可愛くないこと言ってしまうんが俺で。
「…女の子用は、大丈夫なん?」
あ、やば。なんて後悔してももう遅い。
こっちを見たAの顔がちょっと強ばる。
「他の女の子なぁ」
「…うん」
ヘルメットを抱きしめたまま、下を向く。
Aの顔見れん。
叱られた子犬みたいに、ぎゅっと身体を縮こませていると、温かい手がポンポン少し雑に俺の頭をかき混ぜた。
「女の子にヘルメットあげたことはないなぁ」
「…ないの?」
「うん、そんな全員にあげてたらすーぐ破産するわぁ」
「………」
クズ!!
あはは、と朗らかに笑う男の腹に、重めの右ストレートをかます。カエルが潰れたみたいな声が聞こえたけど、無視してさっさとヘルメットを被った。
「…」
「いてて…ん?何突っ立ってんねん」
「乗り方、分からん」
「あっはっは!!!」
ツボに入ったのか、ゲラゲラ笑いながら右手を引かれる。
せーの、て掛け声と共に片足を浮かすと、腰に手が添えられすんなり腰を落ち着けた。
手馴れてやがる…
「ぶすくれんなよ」
「ぶすくれてへん、いつも通りかぁいいかぁいい康二くんや」
「やかまし」
ヘルメットを膝に乗せたまま、Aが後ろを振り返る。
うわ、かっこいいなぁ。
さすが、女の子落とす時の手段に使うだけあるわぁ…なんてふわふわ考える。
こんなん好きになるよなぁ、狡いよなぁ
ヘルメットに篭もる空気が熱い。
多分、俺の今の顔ゆでダコみたいに真っ赤っか。
「ん、行くで。ちゃんとつかまっときや」
「あ、ここ?」
俺の座っとるとこの少し前に出っ張りがあって、そこを掴む。こんなんで大丈夫なんかな??俺死なん?
「ちゃう。ここ。」
「え、わ、」
ぐいって、両手首を掴んで引っ張られる。
頬っぺたにAの背中が当たって、「ひぇ」なんて情けない声が飛び出した。
「落ちんなよ」
「…おん、」
無理かも
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だっちゃ(プロフ) - すがさん» ありがとうございます😊励みになります! (11月29日 1時) (レス) @page8 id: 69c0d47fe1 (このIDを非表示/違反報告)
すが(プロフ) - ワ、、もうすでに好きです、、、更新お待ちしております!! (10月4日 13時) (レス) @page5 id: eb76df11cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だっちゃ | 作成日時:2023年10月1日 18時