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abーside

…ようやく馬車に戻れた…

蓮仁殿下が居る間は、気が気ではなかった…

こちらの計画もことごとく駄目になってしまった。

馬車に乗ってからの真伊子は、目の前の冷やし飴や飴細工には目もくれず、馬車の窓から見える夜空を見上げていた。

僕が必死になって買って来た菓子は、無駄になってしまったようだ。

ru「お兄さま、今日の事…
  怒っていらっしゃるでしょう?」

真伊子がやっと此方を向いてくれた。

ab「…怒ってはいないよ…
  ただ、死ぬ程心配しただけ…」

本当は怒っていた…嫉妬で気が狂いそうだった…

ru「…御免なさい…」

ab「でも、真伊子が無事に帰って来たからほっとした
  よ…」

殿下から引き離す事が出来てほっとした…

ab「どうして外へ出たりしたんだい?」

ru「外から足音がして…
  お兄さまだと思いましたの…
  ずっと一人で寂しかったですのよ…」

そうだったのか…

ab「真伊子、すまなかったね…」

ru「いいえ…わたくしの方こそ…
  ご心配をお掛けして仕舞いましたわ…」

ab「…では、仲直りに冷やし飴を飲もうか。
  真伊子も喉が渇いただろう?」

ru「…えぇ…」




ab「そうだ、このまま少し寄り道して鰻でも食べて帰
  ろうか?
  真伊子もお腹が空いただろう?」

折角の二人きりの外出だから、夕食を食べて帰ろうと提案したが、真伊子は…

ru「……」

ab「真伊子?」

ru「…えっ?…御免なさいお兄さま…何かしら?」

ab「…ううん…何でも無いよ…」

真伊子はあれ程飲みたいと言っていた冷やし飴に全く口も付けず、心此処に在らずといった表情で窓の外を眺めていた…

…もしかして、真伊子の心はあの殿下で占められているのではないか…

僕の中に在るのは、言い様の無い嫉妬と後悔…

真伊子、僕から離れないでくれ…

そう思って傍に居るのに何故か遠く感じる愛しい人を見つめた…

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作者名:琥太 | 作成日時:2020年10月14日 10時

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