72本目 ページ25
「あれ？」
私は目を開けて、その不思議な光景に目を奪われた。
「私の部屋……？」
見覚えのある部屋に私は立っている。
私がいつも就寝や起床を繰り返し、剣士や侍女たちと過ごしている私の自室。
「でも、なんか違うんだよね」
私は部屋を歩き回り散策してみた。
この部屋はとても広い。
一人で使うには十分すぎるほどに
(私の部屋、こんなにもの置いてあったっけ？)
それ故に物の少ない私にとってはなんとも不格好な部屋になっていた。
しかしここにはたくさんのものがある。
一目見ただけで高価だと分かる置物。
着物を入れる長持ちやそれに収まりきらなかった衣も部屋の隅に掛かっている。
「私の部屋だけど、私の部屋じゃない……あれ？これ」
私はふととても綺麗に輝く宝石を見つけた。
かすみさんが私に見せてくれた時と同じ箱に入っているそれは、大事そうに置かれていた。
カタンっ
部屋の襖を開く音が聞こえて私はとっさに長持ちの後ろに隠れた。
(物が多くてよかった。私が隠れたところは見られていないはず……ってなんで隠れた私！！)
自分のバカさに嫌になる。
この宮の主なら隠れる必要ないでしょ！
と頭を抱えて気づいた。
私の着ている服、食事会の時の綺麗な衣じゃなくて、鳥居をくぐったときに着ていたボタンの柄の浴衣だ。
(なんで、この服なの……？)
これじゃあまるでこの宮の今の主が私じゃない、みたいな
「女神、今日も外は暖かくてございますよ」
澄んだ声が部屋に響いた。
私はそろっと長持ちから顔を出して声の主を見る。
とても綺麗な女の人の横顔が見えたが、その声の主はわからない。
けれど、胸がひどくざわついた。
「ふふ。そうね、あとで3人で散歩でもしましょうか」
「はい！！もちろんです！」
「でも、あなたはまだ仕事が終わっていないのでしょう？それが終わり次第ですよ」
「う……。分かりました……」
そういうと、女の人と話していた人は部屋を出て行った。
1人居なくなっただけでこの安心感。
私この後どうしよう。
「出ていらっしゃい。そこにいるのでしょう？」
びくっと体が震えた。
この部屋には確実に女の人と私しかいない。
ということは私の存在に気付いている
「……夢を見たの。あなたに会う夢を。
牡丹の浴衣がとても似合う可愛らしい方
……次代の女神」
私は感じた。
この人は
先代の女神だ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なつの(プロフ) - ぽんぽこさん» ありがとうございます！私もこのお話書いていて楽しかったです。ぽんぽこさんにも楽しんでいただけで嬉しいです！コメントありがとうございました！ (2020年1月6日 8時) (
レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぽこ(プロフ) - 長文失礼しました！ (2020年1月6日 1時) (レス) id: c596b916dc (このIDを非表示/違反報告)
ぽんぽこ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後の方を読みながら少し泣いてしまった...。個人的にこの話がすきで、終わってしまったのは悲しかったけど、浦田さんend見れたから良かった!ありがとうございました! (2020年1月6日 1時) (レス) id: c596b916dc (このIDを非表示/違反報告)
なつの(プロフ) - ふごっぺさん» 返事が大変遅くなってしまいました！！ありがとうございます！ (2019年12月25日 16時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
ふごっぺ(プロフ) - 個人的にはうらたさん落ちがいいなと思っています。 (2019年10月5日 10時) (レス) id: 78ff944084 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつの | 作成日時：2019年9月30日 23時
