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39本目 ページ41

「彼は悪い人じゃない。
きっと何か理由がある。それを聞かずに斬るなんて理不尽以外の何者でもないでしょう?」


「……女神様」


センラさんが驚いたようにこちらを見る。


「くだらない理由だったらどうするつもりなんだ?」


「それを決めるのはあなたじゃない。
私が聞いて判断する。私を必要としてくれてる人がここにいるの。
私は彼の意見を聞きたい」


「……少しでも変な動きを見せれば、今度は斬るからな」


じっと私の目を見たうらたさんは、軽くため息をついてそう言った。


「いいんですか?女神様」


「うん。
やり方は賛成できないけど、私に用があるのは本当のことでしょう?」


「はい、まぁ」


少し気まずそうに返事をするセンラさん。
見れば見るほど美しい顔だ。
金色の髪は陽に当たってキラキラしているし、瞳も同色で透き通っている。


「場所を変えましょう。
……うらた、あなたに護衛を命じます。
坂田は祭具の片付けを」


「「かしこまりました」」


渋々言う2人の声が重なったことにどことなく安心してしまう。


「じゃあ、行きましょうか」


そしてゆっくりと歩きだした。


けれど、センラさんは私の隣には並ばない。
うらたが後ろにいるから隣に並ぶのに抵抗があるのかもしれないが


「センラさん。
センラさんの好きな花ってなんですか?」


「……花、ですか?」


突然話しかけた私に対して、不思議そうに返すセンラさん。


彼は少し悩んだのち、小さな声で言った。


「俺は、牡丹が好きです」


「牡丹かぁ。確かに綺麗ですよね。
どうして牡丹が好きなんですか?」



「牡丹の花って大きくて存在感があるじゃないですか。
けれど、絶対に他の花の邪魔はしないんです。
争うことをしないで、一つの花として悠々と咲いているのが、謙虚だなって」


謙虚……。


私が就任の時に咲かせた花は牡丹だった。


その時から牡丹を見たり、単語を聞いたりすると少しドキッとしていた。


大きく咲いて堂々としている美しい花。
それなのに中身はこんなに臆病。


そう自己嫌悪していた私にとってセンラさんのその言葉はすとんっと胸に落ちた。


「……ありがとう、ございます」


「?なにがですか?」


「いいえなんでも!
ここら辺でいいですか?」


「はい。大丈夫です」


そして私とセンラさんは近くに見えた大きな岩に腰掛けた。

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なつの(プロフ) - over the rainさん» ありがとうございます!!大変お待たせしてしまいました。これからもぜひよろしくお願いします!コメントありがとうございました。 (2019年9月23日 7時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - すごく面白かったです。応援してます。 (2019年9月23日 7時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なつの | 作成日時:2019年3月24日 14時

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