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16本目 ページ16

「うぅ……女神ってなに?」


逃げ出した私は、適当に見つけた部屋の隅にうずくまっている。


「釜が光って、種が出て……それが花になれば女神様?それって、なんか」


「変だよな」


暗い部屋に1人、そう思っていた私に向かって返ってくる返事に体が大きくビクッとなる。


「だっ…む⁉」


思わず大きくなる声を塞ぐためか、声の主は手で私の口を覆った。


「大きな声出すな……ったく、なんでこんなとこに逃げ込んでんだ?」


「はっ…。うらたさん?」


手をそっとはずし、小さな声で話すうらたさん。
一気に安心してしまい、その場に崩折れる。


「よかったぁ、うらたさんで」


「なんかあんま嬉しくねぇな……。
で?なんで逃げたんだ?
女神になるなんて、ここら辺の女にとっては人生の中で一番幸せなことだろ」


「私にとっては違います。
こんなこと望んでない……。ここにきていきなり女神様?混乱しかないじゃないですか」


「……?じゃあ、混乱しなければいいのか?」


穏やかな声音。
だけれど、その声にはどこか私を叱る色が含まれている。


うらたさんは私の視線に合わせるように片膝を折ってこちらを見つめる。


「いいか。ここでもどこでもいつだって落ち着ける場所はない。
どこにいたって、なにがあったって、お前の思い通りに進むことなんて無いだろ。
その度にお前は混乱するんだって泣いて逃げるのか?」


何も言えない。
さっきもうらたさんに怒られたばかりなのに、私はまた逃げている。
受け止めろ、と前を向け、と言われたばかりなのに。


「うらたさん、私は弱いです。
さっきも受け止めろって言われたのに逃げてばかりだ。
こんなんじゃ、いつまでたってもうらたさんに嫌われたまま」


「勘違いするな」


言葉を遮られたことに驚きつつ、うらたさんを見ようとすれば、突然抱きしめられた。


「俺はお前を嫌いにならない。
俺がお前を拾った。なら俺がお前の面倒を見るのは当然で、そばにいるのが当たり前だろ」


優しい声。
その声に私を責める色はなくて、むしろ愛しさが込められているように感じた。


「俺は、お前がこの時代を今まで以上に色づかせると確信してる。
お前はきっと、今までの誰よりも女神に相応しい。だから」


うらたさんは一度言葉を切ると、私の顎を上に向かせた。


「そばに居てやる。
俺を責めてもいい、俺を憎んでもいい。
だから今だけ、この時代を愛して欲しい。
この地を隅々まで愛する女神になって欲しい」

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なつの(プロフ) - over the rainさん» ありがとうございます!!大変お待たせしてしまいました。これからもぜひよろしくお願いします!コメントありがとうございました。 (2019年9月23日 7時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - すごく面白かったです。応援してます。 (2019年9月23日 7時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なつの | 作成日時:2019年3月24日 14時

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