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ユージオは少し間を置いてからキリトとアオイの言ったことに答えた。




「そりゃ……冬は寒いからね」




ユージオの答えに未だ二人は不服そうである。

キリトは聞き分けのない子供のようにぐいっと唇を曲げ、
アオイはユージオに向けて『えー…』と駄々をこねていた。



しかしキリトがすぐに北部辺境では珍しい黒い瞳に、キラキラと挑戦的な光が浮かんだのである。





「そうだよ、ユージオの言うとうり、寒いから食べ物が長持ちするんだ。冬だからじゃない。
 なら……寒くすれば、この時期だって長い時間持つはずだ」





そんなキリトの発言にユージオは呆れ果て、アオイは目を輝かし、アリスは腕を組みながら考え込んでいた。




「簡単に言うなよ。寒くするって、夏は暑いから夏なんだよ。絶対禁忌の天候操作術で雪でも降らせる気か?
 次の日には央都から整合騎士がすっとんできて連れて行かれちゃうよ」




「うーん……。何かないかなあ……ありそうだけどなあ、もっと簡単な方法が……」





キリトが顔をしかめ、そう呟いた時だった。
今まで三人の会話を静かに聞いていたアリスが少し悪い笑みを浮かべながら口を挟んだ。





「面白いわね」





その呟きにユージオの顔色は青くなっていく。






「な、何を言い出すんだよアリスまで」




「別に禁忌を使おうってんじゃないわよ。村を丸ごと寒くしようとか大げさなこと考えなくても、
 例えばこのお弁当を入れるかごの中だけ寒くなればいいんでしょ?」






言われてみれば至極当然の言葉を聞き、三人は思わず顔を見合わせ、コクンと頷いた。


アリスは澄ました笑みを浮かべ、続ける。






「夏でも冷たいものなら、いくつかあるわよ。深井戸の水とか、シルべの葉っぱとか。
 そういうものを一緒にかごに入れれば、中が寒くならないかしら」





「あぁ……そうか」






とユージオは腕を組み考えた。




教会前広場の真ん中には、ルーリッドの村が出来たときに掘られたという恐ろしく深い井戸があり、

そこの水は夏でも手が痛くなるほどに冷えている……



そう考えていると、アオイが『ん〜』と唸った。






『それだけじゃたぶん無理だよ。井戸水は一分もすればすぐにぬるくなっちゃうし、』




「シルベの葉っぱはちょっとヒヤッてするくらいだしな」






アリスは二人に意見を否定され、唇を尖らせた。

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さばとはちわれ2号(プロフ) - ありがとうございます!これからも頑張っていきます!! (2020年3月25日 15時) (レス) id: 1e29d08f47 (このIDを非表示/違反報告)
華月 - 題名に心を惹かれて読んでみましたが、とても面白いです!更新頑張ってください!! (2020年3月11日 8時) (レス) id: cdafea63d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さばとはちわれ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/siotaaki  
作成日時:2020年2月17日 22時

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