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「衛士、か……」
ユージオはぼぞりと口のなかで呟く。
巨樹の刻み手という天職を与えられる前まで、もしかしたら、と漠然と考えていた途方もない夢。
村の男の子なら皆が憧れる《衛士》にもしも抜擢されたなら、生木の皮を剥いだだけの不格好な棒ではなく、中古品であろうが本物の鋼剣を与えられ、本物の剣術を学ぶことができる。＿＿それだけではない。
北部辺境の村々の衛士は、毎年秋になると南のザッカリアの街で開かれる剣術大会に参加することができる。
そこで上位に入れば、街の衛士＿＿＿名実ともに本物の剣士と認められ、央都の鍛治工房で鍛えられた正式剣が授与される____＿＿に取り立てられることもあるという。
夢はそこで終わらない。
衛兵隊で実力を認められれば、由緒正しい《修剣学院》の受験資格を得られる。
＿＿＿＿＿＿相当な難問らしいがその試験に合格し、二年制の学院を卒業すれば、ノーランガス帝国皇帝の御前で開かれる武術大会に参加できる。
昔話のベルクーリは、この大会で見事優勝したと伝えられている。
そしてその次にして究極が、公理教会そのものが催す《四帝国統一大会》だ。
この戦いを勝ち抜いた者だけが、あらゆる剣士の頂点、《整合騎士》に任じられる。
……そこまでは流石に想像力が及ばない。
でも、もしかしたらと思っていた時期がユージオにもあったのは確かである。
「まだ終わった夢じゃないぜ」
突然、横を歩くキリトが小声でそう囁き、ユージオはびっくりして顔を上げた。どうやら、先ほど漏らしたため息たったひとつから思考を全て読まれたらしい。相変わらずの勘の鋭さに苦笑いしてから呟き返す。
「いいや、終わったさ」
そう、夢を見る時期は終わったのだ。去年の春、衛士見習いの天職を与えられたのは、現衛士長の息子ジンクだった。剣の腕ではユージオとキリト、そしてもちろんアリスとアオイにまったく及ばなかったのに。
「一度決まって天職は、村長にだって変えられないんだ」
「たったひとつの例外を除けば、な」
「例外…？」
「仕事をやり遂げた場合さ」
ユージオはキリトの頑固さに呆れてもう一度苦笑する。
「あの樹をぶっ倒せば、俺たちの仕事はきれいさっぱり完了だ。そうしたら、次の天職は自分で選べる。そうだろ？」
「そりゃそうだけどさ……アオイはどうするんだろう」
「アオイも衛士になれば良いのさ！！」
ユージオは再度キリトに苦笑いした。
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さばとはちわれ2号(プロフ) - ありがとうございます！これからも頑張っていきます！！ (2020年3月25日 15時) (
レス) id: 1e29d08f47 (このIDを非表示/違反報告)
華月 - 題名に心を惹かれて読んでみましたが、とても面白いです!更新頑張ってください!! (2020年3月11日 8時) (レス) id: cdafea63d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さばとはちわれ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/siotaaki
作成日時：2020年2月17日 22時
