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ユージオが真剣な表情で話し始める。
「……でもさ、果ての山脈に行くのは、村の掟だけじゃなくて……あれでも禁じられているだろう？
たとえ峠を越えても、行けるのは山のふもとまでで、洞窟には入れないよ……」
それを聞いた途端、ノリノリだった三人ともわずかにせよ神妙な顔を作る。
ユージオが口にした《あれ》とは、《ルーリッド村民規範》はおろか《ノーランガルス北帝国基本法》すらも遥かに超える権威で広大な人界の民すべてを支配する絶対の法
＿＿その名も《禁忌目録》のことだ。
発布しているのは、央都セントリアに天まで届かんばかりの巨塔を構える《公理教会》。
純白の革で装丁された分厚い本の形で、ユージオたちの暮らす北帝国だけでなく、東や南、西帝国のあらゆる町や村に最低一冊は必ず備えられている。
禁忌目録には、村の掟や帝国法と異なり、その名のとおり、《してはいけないこと》ばかりがひたすら列挙されている。
《教会への反逆》とか《殺人》、《窃盗》といった広範囲な禁忌に始まり、
年間に獲れる獣や魚の上限数や、家畜に与えてはいけない餌などの細別された項目まである。
その数は軽く一千を超える。
子供たちが通う学校は、もちろん文字や計算も教えるが、最重要な科目はこの禁忌目録を全て暗記することだ。
＿＿＿＿と言うより、学校で目録を教えないことがすでに目録で禁じられている。
果ての山脈に行くことは目録でもかなり最初のほうで禁忌られている。
ユージオが、山のふもとまで行けても洞窟には入れない、と言ったのはそういうどうにもならない理由があるからだ。
いくらアリスでも禁忌目録にまで挑戦しようとは思うまい、なにせそう思うことがすでに重大な禁忌なんだから、と考えながらユージオはもう一人の幼馴染を見つめた。
長い睫毛に真昼の木漏れ日を煌めかせながら、アリスはしばらく黙り込んでいたが＿＿＿やがてさっと顔を上げると、何たることか、瞳に例の挑発的な光を浮かべて言った。
「ユージオ。あなた、今度も禁止項目の文言が性格じゃないわよ」
「『え……うそ』」
ユージオとアオイの声がハモった。
アオイはユージオが禁忌目録を話題にしたときから、ユージオの胸が痛むくらいの落ち込みようであったが、アリスのその言葉に顔を緩ました。
それはそれは嬉しそうに……
ユージオはそれを見て落ち込んでしまった。
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さばとはちわれ2号(プロフ) - ありがとうございます！これからも頑張っていきます！！ (2020年3月25日 15時) (
レス) id: 1e29d08f47 (このIDを非表示/違反報告)
華月 - 題名に心を惹かれて読んでみましたが、とても面白いです!更新頑張ってください!! (2020年3月11日 8時) (レス) id: cdafea63d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さばとはちわれ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/siotaaki
作成日時：2020年2月17日 22時
