《ヒプマイ》したい、されたい《リクゆるぼ》

看病《された》＊麻天狼 ページ33

✱シンジュク-麻天狼

神宮寺寂雷＊ill-DOC
｢だからあれほど薄着は辞めなさいと言っただろう……｣
彼は朝からこんな調子だ。まるで小言の多い姑。
最近は気温も低く、安定しない天気が続いていた。しかし、オシャレは我慢の精神を崩さなかった私は、寒さを我慢し薄着をしていた。
｢何故あんな格好をしていたんだい？｣
何故って、そりゃ
｢先生と……デートしたかったから｣
正直に答えると、ぱちくりと目を瞬かせる。なにそれ。どういう感情？ 悲しくなり俯くと、今度は笑い出す。
｢馬鹿にしてます？｣
｢いや、意地らしいと思ってね｣
｢なにそれ｣
｢可愛いってことだよ｣
その一言に顔が熱くなる。これは熱のせいだ。
｢次の休みは、暖かい格好でデートをしようか｣
柔らかく微笑む彼に、私は怒りも忘れ絆されてしまう。

伊弉冉一二三＊GIGOLO
体が疲れていると心も元気が無くなるらしい。
先週、休暇を返上した激務を乗り越え、土日祝日の後ろに運良く休日をねじ込んだ私を待っていたのは、疲労による熱だった。
こんな時は一二三くんに会いたくなる。しかし、彼が私の部屋に来れる訳もなく、子猫ちゃんの相手をしているのかLINEは既読もつかない。
半ばふて寝状態でいた私は、夜中に扉をあける音がして微睡みを揺蕩っていると、ありえない声が聞こえ耳を澄ます。
｢Aちゃん、大丈夫？｣
なぜ彼が、なんて考える暇もなく私の脳はもう少しと睡眠を強請る。
きっと、会いたいなんて思うから。私の脳が勝手にみせた幻想だ。
再び瞼を開けた時には誰もいなかった。ただ、ほのかに香る彼の匂いと、夢に落ちる前に感じた額への温もりは嘘じゃない気がした。

観音坂独歩＊DOPPO
｢ごめん、俺が布団奪ったからAが熱なんか出して……俺のせいだ｣
病人よりも余程病気な彼を大丈夫と宥めて抱きしめる。
｢こっちこそ、迷惑かけちゃってごめんね｣
あくまで明るく言うと今度は抱き締め返してくれる。
｢こんなAを置いて仕事なんか行けない……辛い｣
泣きそうな彼を仕事へ行かせるために玄関に移動させる。不満げな彼も社会人。行かなきゃいけないことは分かっているようで玄関に立つ私をもう一度抱きしめる。
｢絶対定時で帰ってくるから｣
そう言って唇に触れる彼のソレは、いつもの迷いもなく本気を感じさせた。
｢待ってるね｣
頷く彼の背中を見守り、扉が閉まったところでしゃがみこむ。彼はこんなに積極的だっただろうか。
もちろん、彼が定時で帰ってこられる訳はなかったが。

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