ハイライト

ハレーション ページ3

今日は仕事早上がりからの撮影。

撮影だっていうのに昨日はついつい海外ドラマ見ちゃって寝不足のくまだらけ。
メイクでごまかしてもらうしかない。
昼ごはんを買って約束より早めに向かう。

ドアを開けるといつものAの元気な挨拶が聞こえない。
奥に人の気配はある。



「もういい。店辞めろ！」


物騒な音と男性の大きな声が聞こえてきた。
びっくりして動けない足をなんとか奮い立たせてもう一度わざと音を出してドアを閉めた。

「おはようございまーす…」


するとすぐに笑顔を貼り付けたここのオーナーさんが奥から出てきた。
撮影の時に何度かお会いしてる。


「八乙女くん、今回もありがとう。Aのわがままにいつも付き合ってもらっちゃって」
「いえ」
「悪いね、よろしく」


Aだって仕事でやってんのに"わがまま"ってなんなんだよ。

職場の上司だし、多少の身内感はあってもいいと思うけど
その言い方じゃまるで…

オーナーが店を出ると真っ赤な鼻をしたAが顔を覗かせた。


「光くん…今日はありがと。いつも通り軽くセットしてあとはスタジオでやるね」

「うん」

「でもちょっと待っててもらえますか？片付けしてきます」


なぁ、辞めろってどういうこと？
何があった？
俺に言えないこと？
いつもなら自分から相談してきたりすんじゃん。
俺が聞いちゃいけないことだった？
Aの顔はずっと晴れないから…


「俺さ新しいモノマネ習得したんだよ、聞いてくんない？」

「聞きたい聞きたい！光くんのモノマネすっごい面白いもん」

俺はこんなことくらいでしか君を笑わせられない？
大ちゃんに見せると微妙な反応するものもゲラなAだから簡単に笑ってくれちゃう。

そんなんだから俺だって調子のってやってみせる。





カシャッ

カシャッ


「クールな感じで。次目線ください。ちょっと直します」

撮っては直し撮っては直し。
遠くにAの声を聞きながらさっきのオーナーの言葉を思い出してた。



「これ最高！ほんといい！憂い感！さすが光くんです！」

満足気にパソコンをのぞき込むAに一安心。
嬉しそうな姿を見れればそれでいい。

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