返りそこなった俺が嗤う完結編 (ページ10)

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潤

あれから俺たちは何事も無かったかのように生活を続けた。

学校やバイトに行って、たまに霊能力関係の仕事をして。
少し変わったのは今まで、学校やバイト以外は割と兄弟べったりだった俺たちが少しずつ他の人と過ごす時間が長くなったことだ。

さとにいの出不精は相変わらずだけど、少しずつ絵を売り出す努力を始めた。
前から絵のお仕事はあったけどさとにいの気持ちが外に向いたことでもっともっと仕事が貰えるようになった。
今ではバイトをやめて絵だけで稼いでいる。

まさにいは前から進路もしれっと決まっていたけど、それに向けて準備しとくんだってすごく勉強している。
聞くには動物系の専門だとかなんとか。
今までは家族第一すぎてどうせもう進路は決まってるからと興味を持っていなかったけど、最近はいくら決まってたからって怠けてちゃダメだと考えなおしたらしい。
勉強になると翔ちゃーんって泣きついてたまさにいはもうどこにも居ない。
なんだかんださとにいよりお兄ちゃんしている気がする。

和も人との繋がりが増えた。
もともと人の懐に入るのは上手かったけど、そもそも和が相手に興味を持たなかったから当たり障りのない付き合いだけでガードを固くしていた。
それが今では学校外の演劇活動に興味を持ったらしくそこのメンバーの人達とミーティングやら稽古やら忙しくしている。

かくいう俺も料理教室に通い始めた。
将来はそっちの方に進むのも悪くないなぁなんて思っている。

それぞれが自分の道を決めて前を向いて歩きして。
おんなじように兄弟で同じ家で仲良く暮らしているけど前までとは確実に違う、さっぱりとした空気が流れていた。

今考えるとあの頃の俺たちは異常だった。
能力を使いこなしているようで完璧に振り回されていたし、余りにも互いに依存していたし…。

翔にいを軟禁してたりとか今じゃ考えられない。

お互いの距離感は変わったけど別に嫌いになったわけじゃない。今でも大好きな兄弟だ。成長した俺らを翔にいにも見てほしいなぁなんて思う。

翔にいの噂はたまに聞くのだ。大学にちゃんと通ってるらしいこととか、少し離れた駅の近くにアパートを借りてるらしいとか。
でも鬼のこととかやばそうな噂は聞かないから上手くやっているみたい。
でも俺たちからは会いには行かない。翔にいが戻ってきたいと思った時を待ってるつもり。