めんどくさい彼女 (ページ24)

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２４…JI ページ24

入学して半月とちょっと
桜もすっかり見頃を終えたある日の帰り道
好きな作家の新作が発売になって
それを買おうと本屋に立ち寄った

この辺では一番大きな本屋で
目当ての本も目玉なのか沢山平積みされていた

店員さんが書いたんだろう
ポップには"3年ぶりの新作！"という文字が躍っていて話題だということが窺い知れた

俺も待ちに待っていた1人だから
早く帰って読みたいと、はやる気持ちを抑えながら1冊手に取ると
その横で俺と同じ学校の制服を着た人が
「う～ん…どっちにしよう…」と2冊の本を両手に持ちながら難しそうな顔をして悩んでいた

俺は然程気にすることもなく
手に取った本をレジに持って行こうと、一本踏み出しかけた時

「それ、面白いですかね？」

周りを見ると他にもその本を手に取ってる人はいるのに
明らかに俺の手元を見てそう言っているようだった

制服が一緒だからかな、と思ったけど
見ず知らずの他人に急にそんな風に話しかける人なんて絶対変な人だ
関わったら面倒だとスルーしようとしたのに

「コレとコレ、どっちにしようか迷ってて」

そんな俺の胸の内なんてお構いなし
っていうか両方買えばいいじゃないか

「どっちを買えばいいか決めてくれますか？」

は？
本当に面倒くさい
でもこのままだとずっと巻き込まれそうだ

俺は当然、彼女が左手に持っている俺が今買おうとしていた物と同じ本を指差した

すると彼女は

「ありがとうございます、これ買いますね」
と、ニッコリ笑ってその本を手にレジへと向かって行った

何だか胸がザワザワした
ただ選んでやったからお礼を言われただけなのに
その笑った顔が頭に焼きついて
しばらく動けなくなった

それから3日後

移動教室のために渡り廊下を歩いていたら
友達と話しながらこっちへ向かってくるあの本屋の彼女に再び出会った

あの時と同じように楽しそうに笑いながら話していた

俺はすぐに分かったけれど
彼女は全く気づいていないようで
一言も言葉を交わすことなく彼女は俺の傍をすり抜けて去ってしまった

ただ、一つだけ変化があったこと

俺の胸がトクンと音を立てたんだ

それからと言うもの
度々すれ違うようになった

俺が気になって意識し始めたからだろう
本当はもっと前からこんな風にすれ違ってたのかもしれない

彼女を見る度にうるさくなる心臓に

『あぁ、好きなんだ』と
そう思った