ハイリスクノーリターン (ページ7)

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干物女の秘密ページ7

カラオケに来たのに
結局私は1曲も歌っていない。

それもこれもハゲ課長のせい…ではなく
私が音痴だから。

中学の時の合唱コンクールで
どうしても上手く歌えなかった私は
先生から『あんたは歌わなくていい』と言われた。

その時は気づかなかったけど
後になってその理由を知った。

学校の先生がそんな事言うなんて問題なんじゃない？
って思ったけど自分が音痴なら仕方ない。

その時確かもう1人同じように言われた子がいた気がする。
名前は覚えてない。

もう10年以上経つのに未だに根に持ってるからね。
言った方は忘れてるでしょう、どうせ。

「そろそろお開きにしましょうか。」

幹事の一声でみんなが安堵の表情を浮かべる中
「もう一曲！」ってハゲ課長が言い出して。

でもジュンミョンが睨むとおずおずと荷物をまとめ出した。

ひょっとして何か弱みでも握ってるんじゃないの。

「じゃあ、私こっちなんで。」

空車のタクシーが通りがかって乗り込もうとしたら
ジュンミョンはみんなに「お疲れ様でした」って手を振ると
こっちに向かって来て言った。

「俺もこっちだから。相乗りしてもいい？」

良いも悪いも言ってないのにもう乗ってんじゃん。

神様どうかお願いします。
うちの方が遠いところにありますように。

祈りながら乗ったのに
私の家の方が近いってどういうことよ！
神様も仏様もこの世にはいないのね。

信じられるのは自分だけってわけか。

まぁいいや。
部屋の中を見られなければそれで良いんだから。

って思ってたのにさ
ここぞとばかりに優しさ発揮してきて。

多少フラフラしてる感は否めないけど
1人で歩けないほどじゃあない。

「ここでいいから。」

「危ないから。つかまって。」

「大丈夫だって。歩けてるし。」

「はぁ、仕方ないなぁ。」

会話が噛み合わない。

ジュンミョンは既に玄関のドアの前までついて来ていて
そこが開くのを待っている。

私はね、人を家に上げたことがないの。
社会人になってから一度も。

だって自分だけのプライベート空間を誰かに邪魔されるのって嫌でしょ？

それに……こんな汚い部屋見られたら会社での評判ガタ落ちじゃん。

(汚いって自覚はある、一応)

「鍵は？」

「もういいから。帰りなよ。」

「そんなフラフラのくせに何言ってんの。早く開けて。」

その優しさもここまでくると迷惑なんだよね。
察してよ。

しかしこの男は察してなどくれない。