ハイリスクノーリターン (ページ36)

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私たちにはお互い会う理由なんてない。
今日も私は真っ直ぐ家へ帰る、

はずだった……

「カンパーイ！」

目の前ではハゲ課長がゴクゴクと喉仏を上下させている。

なぜ課長の真向かいに座らされているんだろう。
お陰で見たくないものまで見えてしまう。

「か、かんぱい…」

控え目にグラスを持ち上げて
一口ゴクリ。

恐る恐る隣を窺うと
さすが若いからか、勢いよく半分ほど空になったジョッキ。
それを静かに下ろすと
こっちを見てニコッとするから慌てて前へ向き直った。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

時刻はもうすぐ定時を迎える。
少しだけ仕事は残っているけど
ちゃちゃっと済ませれば30分オーバーくらいで終わるでしょ。

なんてのは甘い考えだった。

「この後暇、だよな。」

疑問形じゃなく断定。
私のスケジュール把握してんのか君は。

「何で？」

「A社のパクさんと盛り上がっちゃってさ。
この後飲みながら話しでもしようってなって。」

「だから？」

「お前も来ない？」

「いや、意味わかんないし。
私今回関わってないのに行く必要ないでしょ。」

「課長が女子社員連れて来いってうるさくて。」

女子社員なら他にも大勢いるじゃないか。
わざわざ私に目をつけるな。

それに、自分で言うのも虚しくなるけど
私のような枯れ果てたアラサー女じゃなく
もっと若くてお肌にハリのある子
ほら、例えば入社したてのハルちゃんとか。

相応しい人は他にいる。

「ってゆーのは口実。」

「は？」

「実はさ、パクさんがAを気に入ったみたいなんだよな。
だからここは俺を助けると思ってさ、頼むよ。」

何言ってんのこいつ。
取引先のご機嫌とりなんて私の仕事じゃない。

珍しく手を合わせてお願いしてるジュンミョンに
「嫌だ」とハッキリ言ってやった。

「セフンもいるし、チャンスじゃん。」

ってゆーのは私の口実。
本当にイヤな理由はこっち。

セフンくんがいるから尚更イヤなのに。
本当に人の気持ちを分かろうとしないよね。

「だから嫌だってば。他を当たって。」

私はちゃんと断ったはずだ。
なのに…

「課長！行くそうです！」

勝手に報告して私は巻き添えに。

「ヤダって言ったじゃん！」

「もう遅いですー。」

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そういうわけで、私は今ここにいる。

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