ハイリスクノーリターン (ページ31)

今日:12 hit、昨日:9 hit、合計:798,023 hit

４ページ31

ゲームセンターにあるモグラ叩きみたいにさ
顔を覗かせたらハンマーで叩きまくって引っ込ませることって出来ないのかな。

今私は胸の内に芽生えたつまり、"恋"という感情を
手で押さえつけてでも消えて欲しいと思っていた。

セフンくんは哀れんだ表情をしながら
私と反対方向を向きタバコの煙を吸って吐いた。

恋い焦がれて苦しいって、こういうことを言うんだろうか。

聞かなきゃよかったなんてもう遅い。

「そ、そういうセフンくんこそ、彼女いるわけ？
私をバカにしといて彼女いないなんて言ったらそれこそ爆笑ものなんだからね！」

お酒って怖い。

たった2回しか会ってない相手に、こんなに声張り上げる必要あったかしら。

言ってから後悔するのってサイアクだよね。

セフンくんはタバコを吸い終わると
どこか遠くを見ながら口を開いた。

「いたよ、彼女。」

「そ、そう。いるんだ。ふーん……え、いた？」

「2週間前に別れた。」

横顔を気付かれないように窺うと
さも自分は世界で一番不幸な人間だ、とでも言いたげな表情を浮かべていた。

別れを切り出したのがどっちかなんて知らないけど
セフンくんを見てると、その別れた彼女を思い浮かべてるんだろうなって。
恋愛不必要論者の私にだって分かるくらい分かり易い。

そんな横顔すらカッコイイだなんて1ミリも思ってないけどね！！

「彼女のこと、まだ好きなの？」

恐る恐るも口に出すと
予想通り。

「うん。」

ヨカッタ！これで潔く諦められるじゃん！
いや、そもそもどうにかなりたいわけじゃ決してなかったけど。

そんな私の気持ちとは対照的に
遠くを見つめたままのセフンくんは悲しそうな目をしていて
あぁ、こうやって母性本能って擽られるんだなって
また変な感情が顔を出し始めて必死に押さえつけた。