ハイリスクノーリターン (ページ20)

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私が名前を呼ぶと

セフンくんは
「はい」って嬉しそうに笑った。

な、何なのこの子。
キュンキュンするじゃないかー！

一目見た時に胸がざわついて
一度会っただけなのに忘れなれなくて。

彼はすでに私の心のオアシス。

いや、そんなはずはない。

「私、トイレ行ってくる…。」

耐えられなくなって席を立った。
あの顔見てたらどんどん心を奪われてしまう。

私は一生一人で生きてくって決めたんだ。
恋愛なんてものは必要ない。
そんな面倒な事はしたくない。

鏡を見ると
頬が赤く染まってて、
それはきっとお酒のせいじゃない。

「ダメダメ。6個も年下なんだよ。
目を覚ませ私…。」

そうやって自分に暗示をかけて
踏みとどまらせようと試みたけど
案外自己暗示ってものは有効じゃないのか
気づいたら10分以上トイレにいた。

もちろん他のお客さんには変な目で見られたよ。

多分私、催眠術とかも掛かりにくいタイプなのかも。

なんとか気持ちを落ち着かせ
ドアを開けて廊下に出ると
ある人物と鉢合わせた。

せっかく体もほぐれてきたのに
またしてもピーンと背筋が伸びて
自分の意思では戻らない。

「大丈夫ですか？」

「えっ、と…。」

「中々戻ってこないから。気分でも悪いのかなぁって。」

「…ぜ！全然！元気有り余ってます！」

何言ってんの私！
テンパりまくってバカみたいじゃん！

顔が熱を帯びていくのが分かる。
それくらい恥ずかしさでいっぱい。

元気有り余ってたら何なんだよ。

変なことを口走ってしまって自己嫌悪に陥っているというのに
目の前にいるセフンくんから聞こえるのは笑い声。

あぁ、変な人だよ。
わかってるよ。

「あははは、Aさんって面白い人ですね。」

「はは、は…よく言われる…。」

面白い人なんて言われたことないわ。

6個も年下くんにバカにされつつ
それを肯定してしまう自分に呆れつつ。

「元気なら良かったです。
戻りましょうか。」

なんて眩しい笑顔なんだ。
身長は大きいのに笑うと子供みたい。

まぁそのギャップが序章だったとは
今はまだ知らない私なのです。