ハイリスクノーリターン (ページ16)

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私は家に仕事を持ち帰るのはごめんだ。

唯一心が休まるあの場所で
仕事するなんて正気の沙汰じゃない。

家に帰れば美味しいお酒とおつまみが私を待っているのにな。

「んー！」

声がした方を見ると
ジュンミョンが腕を伸ばして体を解していた。

「はぁ。A、俺もう帰るけどそっちは？終わりそう？」

「もうちょっとやってから帰る。」

「そっか。」

いいな。私も今すぐPCの電源を落としたいよ。

本日何度目かのため息を吐き出し
煌々と光る画面を睨み続ける。

カタカタと鳴るキーボードの音だけを響かせていると
妙な視線に気付き振り向いた。

「おわっ！な、何してんのそこで。」

「ん？」

私のデスクと背中合わせの真後ろ。
足を組んで座っているジュンミョンが意外と近くにいてびっくりした。

終わったんならさっさと帰ればいいのに。
何でまだいんの。

「もうちょっとなら待ってようかと思って。」

「なにを？」

「Aを。」

意味不明だし。
待っててくれなんて頼んでないし。

むしろ1人の方が集中できるんですけど。

「待たなくていいよ。帰れば？」

「んー、もう遅いしさ。送るよ。」

高圧的な態度とは真逆に
優しい目をしてそんなこと言うから
ちょっと、ほんのちょっとだけ調子狂う。

優しいって別の課の女性社員たちが騒いでたのはこういうことか。
その片鱗を少し見た気がした。

まぁでもそれはお節介って言うんだよ。
私にとってはね。

じーっと何をするわけでもなく
私の後ろでカタカタするのを見ているもんだから
逆にちっっっっとも進まないんですけど！

はぁ…もういいや。
まだ2日あるし。

「終わった？」

強制終了だよこんなもん。
あんたのせいでね。

「飯食い行かない？」

「は？やだよ。」

「いーじゃん。腹減ってんだよね、俺。」

私だって減ってるに決まってる。
だってもう11時になろうとしてるって言うのに夕飯食べてないし。

けれどね、言っとくけどね。
私はまっすぐ家に帰りたいわけさ。

この厚い化粧をさっさと落としたいのだ私は。

なんていう私の思いなど彼には関係ないらしい。

「話したいことあるんだ。」

そんなジュンミョンの言葉が気になって
ノコノコ後をついて行った。