呟き 【文豪ストレイドッグス短編集】

逸らしてしまえ 江戸川乱歩 ページ24

息を呑んだ

今のこの光景に

同時に、背筋に電流がはしった

ゾクゾクする、狂気的なこの光景

私は、今何をした？

赤い花弁が咲き乱れている

小さな芽が枯れている

手は生暖かい

身体は冷たい

初めて、私は初めて


人を、殺した


悪いことをしてしまったという背徳感

楽しい、楽しい！

もっと！！もっと！！私に頂戴！！

彼女は、知ってしまったのだ

人を殺すという、快楽を

もう、戻れない


瞬間、ドアが開いた

『誰！？』

その正体を見た瞬間

手に持ったナイフが

カランと音を立て、落ちた

『ら、乱歩…さ…ん』

江｢A…？これは…君がやったのか…｣

彼は、珍しく目を見開いていた

私は違うが、彼は探偵社員だ

こんなことをして、彼は、いや、まず世間が許してくれるわけない

私は、一瞬にして正気に戻った

『ち、違うの、これは、あの』

足が震える

どうすれば、どうすればこの状況を解決出来る

いや、解決法なんてないのか

でも、何か必ず、何かあるはず

焦りすぎて自問自答を繰り返す

その間は、息苦しい沈黙が続くだけ

過呼吸になりそうだった

江｢大丈夫｣

そう言い、私を抱きしめた

『え…』

私の体には、返り血がついている

汚いのに、彼は私を抱きしめた

江｢僕は何も見てないし、君は何もしていない、これは事故だ、僕がそう見せかけるから、君は何もしなくていい｣

『乱歩…さ…ん』

貴方は、優しすぎる

そのせいで、いつも傷つくのは彼なんだ

震えを抑えるように、私の背中をさすってくれた

『乱歩さん…キスしてください』

こんな状況で、馬鹿らしい

そう思うかもしれない

でも、彼を求めたかった

そっと、唇が重なる

江｢A…僕は、どんな君でも愛してるから｣

あぁ、貴方は、手を赤く染めた醜い私でも、愛してくれるのですか

犯罪を犯し、世間から追放されるべきものに

愛を、優しさを、与えてくれるのでしょうか






____________逸らしてしまえfin

魔法をひとつ 中原中也→←信者 (1部映画のネタバレを含みます)

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