お月様の日、君と

松川一静 ページ4

「うわあ！！」

「うるっせえよ！俺らが着替えらんねぇから
さっさと着替えて出てこい！」

岩泉の渾身の叫びが聞こえるがそれ所ではない。
青城の真っ白ジャージのズボンに赤黒いシミ。
家に忘れてきた制服。とりまオワタ。

朝練あるからってジャージで来た朝の自分を
ぶん殴りたい、蹴り飛ばしたい。

とりあえず部室のドアを少し開けて
顔のみを外に出す。

「…んだよ。」

「とりあえず松か花か溝口くん呼んでくんね？」

「んだそれ？」

「お前じゃ話にならんってこっちゃ。
下履いてねぇから早めに頼む。」

「てめぇそこから出たら覚えとけよ。」

それでも顔を赤らめてダッシュで行ってくれるとこ
岩泉の素晴らしい所だと思うよ。





「Aー？どした？」

「松か、よかったぁ。」

岩泉、本当ナイスチョイスだよ。

「簡単に今の状況を伝えるとだね
1.お腹の中でウサギさんが餅つき大会なう
2.我らが真っ白ジャージに赤い花が咲いている
3.制服家でお留守番中
4.ナプキンもタンポンも持って来てない」

「俺としては4までオブラートに包んで欲しかった。
ジャージは上も汚れたの？」

「ズボンだけ。」

「俺の鞄に黒のウィンブレ入ってるから
取り敢えずそれ履いて出ておいで。」

「え？勝手に漁って大丈夫？
アハーンな本とかビデオ、隠さなくて大丈夫？」

「今は花が持ってるから大丈夫。」

今度花に借りよう、と思いつつ松の鞄を開けると
目的のそれはすぐに見つかった。
履いて松に声をかけつつドアを開けるも、

「履いたー。でもちょっと待って、腹痛い。」

部室を出てすぐ腹痛に襲われ、座り込む。
元々テンションが高めの話し方なので軽めに
思われがちだが、生理痛は重い方だ。
現に今もヘラヘラしつつ結構辛い。

「んー…ちょっと我慢な。」

意味が解らない言葉と同時に浮遊感。

「お姫様抱っこだー。すっげ、王子様みたい。」

「そりゃどーも。
辛いなら無理して笑わないで。」

「うん…ごめん、ありがと。」

安心して気が抜けたのか、更に腹痛は酷くなる。
痛みから涙も出てきて初めてのことで戸惑った。

「A、大丈夫。
お腹痛いね、頑張ってて偉いね。
もう頑張らなくていいんだよ、
俺の前では無理しなくていいんだよ。」

その言葉がじわりと心に染み込んで
久しぶりに思いっきり泣いた。
でも温かくて幸せになったよ。









【松かっこよすぎ。惚れた。】
【俺のお姫様になっちゃう？】
【なっちゃうー。】

嶋田誠→←二口堅治

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