大平獅音 ページ22
下腹部が鋭く痛んだ。
痛すぎて立っていられない。
持っていたビブスが落ちるのと同時にへたり込んだ。
苦しい、辛い、痛い。冷や汗が止まらない。
体育館の音が遠くなってく。
「A、大丈夫。ゆっくり、息してごらん。」
体育館の端にいたはずの獅音の声。
それだけは鮮明に聞こえた。
大きな手がゆっくりゆっくり背を行き来した。
体育館の音は戻り、痛みは徐々に落ち着いた。
「大平さん!持ってきました!」
工が元気に獅音のエナメルを持ってきた。
「ありがとな。あと監督の隣に椅子出してもらえるか。」
獅音は受け取ったエナメルから水と鎮痛剤を出した。
頬につけて温度を確認してキャップを緩めた水と鎮痛剤2錠が渡された。
素直に飲むと今度は獅音の大きなジャージが羽織らされた。
「そこで部活終わるまで待ってて。
眠くなったら寝ててもいいから。
こまめにトイレは行くんだぞ。
念のため行くときは俺か監督に言ってからな。」
心配性だなと思いながら頷くと、いい子と頭を撫でられて監督の隣の椅子に座らせられた。
獅音は監督に私のことを話してるらしかったけど、獅音のジャージが温かいしいい匂いだし、眠くなってきたから目を閉じた。
.
ゆらゆら、ゆらゆら、あったかい、きもちいい。
うっすら目を開けると、いつもより目線が高い。
景色がゆっくり過ぎていく。
「起きたか。」
「れお、こっち、だんしりょうじゃない。」
「Aが起きないから送ってやれって。
ちゃんと許可はもらってるから。」
「ふーん。」
「俺がいない時に痛くなったら困るだろう。
いい加減、自分でも薬持ったらどうだ。」
「だって、れおんいつもいっしょじゃん。
いなくてもすぐきてくれるし。」
「本当、Aには敵わないな。」
獅音がくすくすと笑った。釣られて笑う。
「ほら、降りて。
明日は一応、点呼前に電話するけど辛いようなら朝練は出なくていいから。」
獅音の背中が居心地が良すぎて降りたくない。
グリグリと肩に頭を押し付けると苦笑された。
「いいから、降りて」
渋々降りると寮の陰に連れ込まれた。
ちゅ、と小さなリップ音が響く。
「いつでもAのとこに飛んでくよ。愛してる。」
.
【獅音の部屋泊めて】
【卒業したらね】
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イナゴの佃煮(プロフ) - 瑠璃葉さん» 瑠璃葉さんお久しぶりです!しんどくなったときの妄想をそのまま書き綴っていますのでそう言っていただけると嬉しいです!お互い辛い時は妄想で乗り切りましょ!! (2019年4月25日 17時) (レス) id: 0b6026706d (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃葉(プロフ) - この作品、すごく素敵だと思いました。なってるときに見ると余計にそう思います。素敵な作品をありがとうございます! (2019年4月5日 22時) (レス) id: 341178e5e0 (このIDを非表示/違反報告)
イナゴの佃煮(プロフ) - 里紗さん» すみません!!ご指摘ありがとうございます!!すぐに直します! (2018年6月10日 18時) (レス) id: 0b6026706d (このIDを非表示/違反報告)
里紗 - 夜久さんの名前は衛輔だとおもいます (2018年6月10日 12時) (レス) id: 3698aeb15e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イナゴの佃煮 | 作成日時:2017年11月15日 20時