壱 ページ8
私の存在に驚いたのか、獪岳さんの瞳が大きく見開く。
どうして。と何かを言いたげな彼に微笑みかけ、いつの間にか私は獪岳さんに言葉を紡いでいた。
「あなたのことが世界で1番好きでした」
本当はこの私の行動は許されない事だと分かっている。
「助けて貰った日から。ずっと」
でも、飛び出さずには居られなかった。
「あなたは覚えていないかもしれないけど」
思い出を語るように、子守唄を歌うように。
「貴方の背中を見るのが好きだった」
私の口は止まらなかった。
「貴方の雷が大好きだった」
きっと、彼は沢山の人を殺めたのだろう。
「貴方のひたむきに努力する姿も、私には無いものを持っているところも、全て私の存在を救ってくれた」
いくつも赦されないことをした彼の行先はきっと地獄なのだろう。
……ならば、どこまでも追いかけてやろうではないか。
彼の行く先がどこであろうと、彼が拒絶しない限り私は彼の背中を追いかけ、時に話しかける事をやめる気はない。
ここまで口にして、やっと私は獪岳さんの事を好いていることに気がついた。自覚してしまったからにはもう戻れない。
「全部全部…………愛していました」
一人孤独に死なせるだなんてさせない。私だけは彼のことを愛すし、私だけは彼が何をしようと赦す。
彼の罪だって被ってやる。一緒に償えばいい。
カチッとどこからともなく何かの音がした気がした。
そこまで言い切って我に返り、獪岳さんと目を合わす。
もう口元は消えてしまったが、まるで呆れたと言わんばかりの表情で私を見やる。
「上等だ、着いて来れるなら着いてきてみろよ」そう言われた気がした。
ふと下を見やれば地面が近づいてくる。
私は最後と言わんばかりに獪岳さんの首を抱きしめ、今生での別れを告げた。
「……きっと、生まれ変わっても、私はまた獪岳さんに会いに行きますからね」
そのうちぐしゃりと、私の体が床か何かに叩きつけられ、全身の骨が折れる。
私の意識が飛ぶその瞬間も、私は消えていく獪岳さんを見送った。
そして、私も目を閉じる。
＿＿＿暗闇の中、獪岳さんが手を引いてくれた気がした。
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�桟鈬�(プロフ) - リリィなモモさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！そうですね、獪岳が幸せになる世界線が欲しいですね… (7月15日 14時) (
レス) @page10 id: 6e9456ced1 (このIDを非表示/違反報告)
リリィなモモ(プロフ) - うあぁぁ！めちゃくちゃ良かったです！ほんとに獪岳は救いがないので少しでも幸せになってほしいですね… (7月15日 2時) (レス) @page10 id: e604e437d5 (このIDを非表示/違反報告)
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