【妖恋物語:鬼編】人じゃない君に恋をした。【狩屋マサキ】 (ページ41)

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第参拾捌話第弐章ページ41

――転校生が来た。

「神無月夜美です。よろしく」

背中まで伸びた漆黒の髪。憂いを帯びた紫の瞳。

凛とした立ち姿はまるで日本人形のような完璧さと美しさを感じる。

一言で言えばそう、不思議な奴だった。

「ねぇ、神無月さんはどこからきたの？？」

「遠いところだ」

「えー、教えてよー」

「ふふ、言わない」

「あ、じゃあ入りたい部活は――」

予想通り休み時間は転校生に興味を持った奴等が集まる。それを転校生は１人１人丁寧に対応する。

ただ、外見に合わない少し男らしいその話し方は、少し自信がなさそうな、不安げな声のせいか、気丈に振る舞っているようにも聞こえた。

まあ、誰だって見知らぬ人がたくさんいるなか話すのは不安なのだろう。

――けれど、

俺にはわかる。わかってしまう。それだけではないことを。

あの瞳には、何も映っていない。何も届いていない。

薄い壁を作って遮断している。

あの笑顔は偽りだ。本物ではない。

その証拠に瞳が笑っていない。

そして俺はそれを"見たことがある"、"知っている"

それは、

『剣城！』

――ゴッドエデンにいたやつらと、同じ瞳だ。

仲間であり、ライバルであり、敵である。

俺にとってゴッドエデンでの人間関係というものはそういうものだった。

誰１人、本当の意味で相手を信頼などしていない。

上っ面な会話。

上っ面な心配。

上っ面な、絆。

心の奥底ではいつ蹴落としてやろうかと考えている。

転校生は、そんな奴等と同じ瞳だった。

しかしそれに気づいたのは俺しかいなかった。

――こんなことがわかるのは、

かつての俺も、彼女と同じ瞳をしていたからかもしれない。

なんて、ここにいる誰にも言えるわけねぇよな。