【妖恋物語:鬼編】人じゃない君に恋をした。【狩屋マサキ】 (ページ35)

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第参拾参話ページ35

「嘘はいけないよ？」

顔は笑顔のまま、けれど目は笑っていなかった。

――私は何か失敗でもしたのだろうか？

そんなはずない。

半分は、事実、２００年前の、私の言葉だ。

人をまだ信用していた頃の、私の言葉だ。

だから、

「嘘じゃないです」

「確かに、君の気持ちを考えずに聞いてしまったことはすまないと思う」

つらつらと、思ってもないことを言われる。

――ダメだ、話を聞いてくれない。

ヒロトさんは間違ってはいないのだけれど、私は確かに嘘つきなのだけれど、

言ってしまえば、この存在こそ嘘そのものなのだけれど、

「嘘じゃないって言ってるじゃないですか……！」

ベッドに拳を叩きつける。

なんでこんなにめんどくさい奴なの？

放っておいてよ。

お前には関係のない話だろう。

嘘だろうが本当だろうが、なんでも。

「だけど、ここにはマサキもいるんだよ。君はマサキにまで嘘をつく気なのかい？」

マサキに嘘をつくはずないじゃないか。

マサキはもう知っているんだ。私がうそつきだって。

ヒロトさんを睨み付ける。

貴様なんぞに真は語らない。

「マサキに嘘はつきません。貴方に何がわかるんですか、嘘じゃないです。私は必要ないからここにいる、無能だから捨てられて」

――ああ、嘘だらけの言葉に虫酸が走る。

私が捨てられたのはただ"化け物"だからなのに。

無能なのは人じゃないから、

必要ないのは化け物だから、

捨てられたんじゃない。もともと、存在なんてしていない。

「じゃあ君は一体何に怯えているんだい？」

怒りから哀れみの瞳へと変わる。

――怯えている？私が？

「怯えてなんか……」

いない。と果たして言い切れるのか？

私は。

化け物は、

人の何を知っている？

――怖いか？

人に紛れるのは、

人の振りをするのは、

"悪魔さん"になるのを止めるのは、

人を守るのは、

守れず失うのは、

ああ、そうだ。そうなんだ。

「……怖いさ」

そんなの、当たり前だろう。