【妖恋物語:鬼編】人じゃない君に恋をした。【狩屋マサキ】 (ページ27)

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第弐拾伍話ページ27

『いーんじゃない？』

なんて。

そんなものなのだろうか？

「Aはさ、それで後悔してるわけ？」

「それは……してないといえば、嘘になる。でも私は――」

私は、

私は、してならないことを、人として、行ってはならないことをしてしまったのだ。

言葉を遮られてもなお、頭のなかではそう考えている。考え続けてしまう。

「俺はAのこと全然知らないから、Aからすれば何もわからない無神経なやつかもしれないけど、少なくとも、そこまで気にしなくていいと思う」

――本当にいいのだろうか。

少なくともマサキは、許してくれたのだろうか。

人として。人間として、

なんら変わらないと。

"変わりはない"と。

私は、復讐は、抱いてはならないものだと思っていた。

人間の、生物の抱く感情ではない。

そんな風に思っていた。しかし、

「そんなものなのか……？」

「そ、誰だって１度くらいは人を恨むことがあるわけだし？する人間はするんだよ。復讐ってやつをさ。別に、Aだけじゃない」

「でも……」

それでも、化け物なったりはしないだろう。

人として、生物死んでしまったりはしないだろう。

「それよりさぁ、」

雰囲気を変えるように、遮るように。マサキはこの話を終わらせた。

気遣ってくれたのだろうか。

「Aってホントは何なの？ "悪魔さん"って演じてただけなんだろ」

――話題転換は、気を遣ってくれて嬉しかったが、痛いとこをつくな。

「実のところ、詳しいことは私にはわからない。だが昔人は私を、"鬼"、と呼んだ」

「鬼？」

「そう。人を喰らい、暴れ、人々に恐れられた」

人に化け、人を襲う。

「私も、なぜ私が鬼と呼ばれるのか気になって調べたことがある。どうやら、憎しみや嫉妬の念が満ちると人は鬼になってしまうという説があるらしい。……間違ってはいないな」

それどころか、その文字通りだな。

今でも笑えるな。

「A……」

マサキ、笑ってくれ。

そんな、悲しい顔をしないでくれ。

――なぜだか、心が痛いじゃないか。