【妖恋物語:鬼編】人じゃない君に恋をした。【狩屋マサキ】 (ページ26)

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第弐拾肆話ページ26

「今からいうことは最低なことだ。許されないことだ」

「……」

何も言わない。否、言えなかった。

目をそらすことも。

Aが、あまりにも真剣な目だったから。

必死な目だったから。

言葉が浮かばなかった。

ただ、例え最低な言葉だったとしても、許されない言葉だったとしても、受け入れる。

Aのすべてを認めてやる。

今の俺には、それしかできないから。

「――私が最初に化け物になってしまったのは、いや化け物になったのは、ただの復讐の為だったんだ」

「……」

――言葉が出なかった。出てこなかった。

いや、冗談抜きで。

浮かばない次は、出てこなかった。

彼女に何があったのか、それは俺の知るところではない。

しかし、復讐。

復、讐いる。という意味で。

言葉通りの、復讐。

さっきの話を聞いていただけでも、気持ちはわかる。

もし、俺が同じ立場なら、そんなときは俺だってそうしていただろう。

自分を貶めた人間に、罰を。

――たとえそれが、己の人としての生を捨ててしまったとしても。

それに、今の俺だって。

そんなのAなんかに比べれば、俺のことなんてとてもとても小さなことだけれど。

「俺だってさ、思うよ。ホントにたまにだけど。復讐……とまではいかない、それに近い何かはある」

仮にも俺は捨てられたのだ。

「……」

「でも、そんなことしたって意味ないし。俺の場合はさ、仕方なかったんだよ」

そ、仕方なかった。

そのせいで、俺の人生は少しばかりひねくれてしまったけれど。

「だからさ、いーんじゃない？そんなの」

「誰にだって他人を恨むことはあるし。Aはさ、それで後悔してるわけ？」

「それは……してないといえば、嘘になる。でも私は――」

「じゃ、いーじゃん」

そんな昔話。

「俺はAのこと全然知らないから、Aからすれば何もわからない無神経なやつかもしれないけど、少なくとも、そこまで気にしなくていいと思う」

だって俺はAのこと、そもそも化け物だとも思ってないから。