【妖恋物語:鬼編】人じゃない君に恋をした。【狩屋マサキ】 (ページ22)

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第弐拾話ページ22

「今までのままでいい」

――は？

マサキの言ってることが理解できない。

「な、何故だ？このまま？」

ふわふわで、曖昧で、確定しないままでいい？

何故？どうして？

皆みんな、それを嫌がったから。

それを否定したから。

だから、私は"悪魔さん"を演じていたというのに。

"悪魔さん"を利用していたというのに。

動揺する私は、マサキは平然と答えた言葉に驚かされた。

「いや、今までのままの方が雪麗らしくていいかなって……。そもそも、俺のなかではAのキャラは確立されてるってゆーかさ……そんなにうろたえること？」

――私、らしい？

確立されてる？

それは彼のなかで"A"がもう作られているということなのか。

嗚呼、そうか。そうだったのか。

これが、マサキに見せていた"A"という存在こそが、

私という"キャラ"であり、設定であり、全て。

初めて会ったあのときから、既に"A"は始まっていたのだ。

『生きている者は、生きている誰かに認識されたとき、その瞬間に自分を形成する。他人がいるから自分が存在する……みたいなものかな』

大切な"誰か"が言っていた。

――私はすでに"私"を創っていたんだ。

"悪魔さん"というものを演じながら。

気付きそうなことだったのに、今まで気付けなかった。

全く滑稽な話だ。

全く滑稽な噺だ。

そう思うと自然に笑みがこぼれた。

「全く……やはりお前は面白いな」

「何の話？」

「いや、別に？」

「なんだよ、それ。教えてくれたっていーじゃん」

子供のように頬を膨らませるマサキは、少し幼く、可愛らしく見えた。

「また今度な」

「ちぇー」

――私が今日気づいたこと。それを君に話すのは、

もう少し後でもいいだろう？