【妖恋物語:鬼編】人じゃない君に恋をした。【狩屋マサキ】 (ページ11)

今日:17 hit、昨日:5 hit、合計:9,131 hit

第拾話ページ11

「なんじゃ、嫌か？ならば仕方あるまい。今夜の食事として――」

「ちょ、ちょっと待った!!なるから、友達になったらいいんだろ!?」

悩む時間もなしかよ……。

「うむ。わかればよい」

友達になれなかったら食べる。正直、常人の考えではない。

"悪魔さん"は人ではないと実感してしまう。

ああ、でも"悪魔さん"は人間を食べるんだっけ。

この場合、彼女は餌と友達になろうとしてるのか。

――俺、保存食じゃないよな？

額に変な汗が流れる。

考えないでおこう。

少なくとも今は友好的な関係になれそうな気がする。

「あのさ、せっかく友達になったんだから一つ聞いていい？」

友達、を強調して言う。

「む、何かの？」

１つと言わず、８つでもいいぞ！

――よほど友達が欲しかったのかな。

友達、という単語を口にしてから彼女の表情が変わった。

少し、瞳が嬉しげに光っている。

しかし八つもしたい質問なんて持っていない。

だから、一つだけ。

「お前の名前。本当の名前まで"悪魔さん"ってわけじゃないだろ？教えて」

――いつまでも"悪魔さん"って呼ぶわけにはいかないし。

悪魔。というより鬼っぽい彼女の名前を、俺は知らない。

結局、俺だけが名乗っていたから。

ただそれが知りたいんだ。

「名前のう……」

そう言ってため息をこぼす。

さっきまで嬉しげに光っていた目は、また元に戻っていた。

まるで言いたくないことを聞かれたような。

――え、本当に"悪魔さん"っていう名前だったりする？

頭にはてなが浮かぶ。

「名前……語るには少し時間が必要だな。"悪魔さん"に"なった経緯"も含めて話さないといけないから。」

スッと、人間かはわからないが、とにかく、初めて会ったときの姿に戻り、近くに置かれていただか捨てられていただかわからない、ドラム缶？みたいなものに座った。

「マサキも座れ。長い話になる」

と、自分の隣をポンポンと叩く。

そこに、座れということだよね、これ。

「……うん」

おとなしく隣に座る。

本当に長い話になりそうな雰囲気だった。

「さて、まずは"名前"の意味から話そうか＿＿」

過去を懐かしむような、そんな瞳。

今の彼女の目には、何が映っているのだろうか。