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場地さんとAの姿は、すぐに夜の闇に溶けていった
ぼんやりと2人の消えた先を見つめてどことなく喪失感を覚えていると、運転席のシートに重みが加わった
起きてたんですかと声をかければ、一虎くんは意味深に口の端を擡げる
「場地にとられちまったなぁ〜?」
「何が」
「ンなもん決まってんだろ。Aだよ」
「はぁ、別にとられたとか思ってねぇよ。場地さんはAを送りに行っただけでしょ」
「千冬、アイツが好きなんだろ」
突拍子もない発言に、思わずビクッと心臓が跳ねてしまう
「……なんでその話になんの」
「んー、妙に親切だし、よく目で追ってるから?」
これは、ただの酔っ払いの戯言だ
出来るだけ平静を装って「……そっスか」と端的に返したら、照れんなってー!と一虎くんはバカスカ車のシートを叩いた
「ちげーの?千冬いッッつもAと仲良くしてんじゃねーか」
「仲良くしてるのと好きなのは別。酔ってんなら寝ててください」
「ふーん。そうなんだー」
「何すかその目は」
「好きじゃないなら、オレ貰ってい?」
「は?」
思わず、低い声が漏れた
酔いの戯言にしては声音がマジだった。とんでもない一言を放ったくせに、酷く余裕そうな様子で、不敵な笑みを浮かべている表情からは、それが冗談なのか本気なのか読み取りにくい
ただ、オレにとってそれが酔っ払いの戯言で終わらせていい一言ではないのは確かだった
「一虎くん、Aに惚れてんの」
「うん」
即答かよ
「何か都合悪ぃ?」
「いや、悪いっつーか、なんつーか……」
弄るつもりもなさそうに首を傾げられ、吃ってしまった。さっき、場地さんにAを連れていかれた時のと同じ気分で、モヤモヤするのだ
何も返せず、ただ視線を逸らしていると一虎くんは「でもなー」と宙を仰ぐ
「場地もアイツのこと好きっぽいんだよなぁ」
「ば、場地さんも!?」
「うん。だってそんな感じしねぇ?いつか自然な流れで手とか繋いでそう」
「っえ、手ぇ!!?」
「場地の場合初め無自覚だな。んで何かあいつ見るとモヤモヤすんだよって相談してきて、恋じゃねって返したら意識すんの。ピュアだよなぁマジで」
そこまでボヤいた後、「ま、あくまで想像だけどなー」と付け加え一虎くんはまた爆睡し始めた
呆然とその寝顔を見て、空いた口が塞がらず頭の中にぐるぐるとその想像が回る。う、嘘だろ
(この2人が恋敵とか、マジかよ……)
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ふゆう(プロフ) - つのさん» コメレスめっっっちゃくちゃ遅くなってすみません!!コメントすごく嬉しかったので3話程更新させていただきました!!暫くリベ夢から離れてしまっていたんですが、ちまちま更新しようと思うのでまたよかったら読んでやってください☺️ (2022年5月2日 23時) (レス) id: 05ce7d3c5e (このIDを非表示/違反報告)
つの(プロフ) - パレット・デイズってもう更新しませんか?めちゃくちゃ好きでもう一度読んだのですが続きがすごく読みたいです。お願いします! (2022年1月15日 0時) (レス) @page18 id: 3069a38d25 (このIDを非表示/違反報告)
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