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無事、我が家に到着し、一度車をマンション管理の駐車場に止めてもらった。
荷物を纏めてお暇しようとした所で、すっかり記憶から飛んでいた先輩コンビを思い出した。
「あの、後ろの御二方、大丈夫ですか?
家着いてから言うのもアレなんですけど、必要だったらお手伝いしますよ」
「別にいいよ。オレが何とかしとくから。それより、オマエはこっから一人でへーきなの?」
「あ、えっと……」
平気と言ったら嘘になるのだが、あまり千冬先輩に迷惑をかけたくない。
大丈夫です、と答えようとした時、不意に後ろでモノの動く気配がした。
「オレが送る」
さっきまで寝ていた場地先輩だった。
あ、おはようございます、とか何とか返していたら、場地先輩は車を降りて助手席のドアを開けた。
「眠かったらオレ送ってきますけど」
「いい、運転して貰ったからオレが行ってくる。一虎見といて」
「……はい」
千冬先輩はどこか腑に落ちない様子だったが、浮きかけた腰を降ろした。
場地先輩に促されて外に出ると、ヒンヤリとした空気に当てられ、そのまま場地先輩の隣を歩いてマンションの階段を上り始めた。
私の部屋は三階で、何回か先輩が来たことはある。勿論、仕事関連だけど。
必要最低限の家具を揃えただけの殺風景な部屋、その居場所を知ってるだけあって歩みこそはしっかりしているのだが、如何せん、相手は酔っ払いだ。
送って貰ったあと、帰り道で階段から転げ落ちたとか何かあったら大変だ。
「あの、先輩!先輩お酒飲んでますし、ここら辺でだいじょうぶですよ?」
「あ?オレが送るっつってんだからテメェは黙って送られてろ」
「酔いのせいか罵倒がひどい!」
ちょっとこれ駄目なんじゃないか。
急にガクッとか倒れられたりしたら、先輩のサイズじゃ私一人で何とか出来ないよ。
余計に心配になって、「あの、本当に平気ですから。先輩に迷惑かかったら申し訳ないですから」と繰り返したら、場地先輩は心底煙たそうに、うるせぇと私の腕を掴んだ。
「一人で歩くの怖いんだろ」
場地先輩が少し振り向いて、ピタリと言い当てられて言葉に詰まった私を見やる。
「だったら大人しく隣歩いとけ、千冬に迷惑かけたくなかったんだろ。オマエの考えぐらい分かるわ」
そこまで言って場地先輩は前に向き直った。つかつかと階段を登りつつも、私の腕を掴んでいた手をするりと離す。
迷っていたのだろうか。
暫くして、彼は私の手を優しく握った。
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ふゆう(プロフ) - つのさん» コメレスめっっっちゃくちゃ遅くなってすみません!!コメントすごく嬉しかったので3話程更新させていただきました!!暫くリベ夢から離れてしまっていたんですが、ちまちま更新しようと思うのでまたよかったら読んでやってください☺️ (2022年5月2日 23時) (レス) id: 05ce7d3c5e (このIDを非表示/違反報告)
つの(プロフ) - パレット・デイズってもう更新しませんか?めちゃくちゃ好きでもう一度読んだのですが続きがすごく読みたいです。お願いします! (2022年1月15日 0時) (レス) @page18 id: 3069a38d25 (このIDを非表示/違反報告)
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