際限のない檻の中で［2］【羽宮一虎】 (ページ2)

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腑に落ち切ってないように、ふーんと鼻を鳴らして、お母さんはもう一度階段下から「体力有り余ってるならちょっとお使い行ってきてくれない？」と要件を付け足した。

「ちょうど今ケチャップ切らしちゃったのよ。お夕飯にオムライス作ろうと思ったんだけど、材料なくて困ってるから買ってきてー」

「いいよー。他に買うものある？」

「うーん……じゃあ、千切りキャベツとコーンもお願い。こっちのはサラダにするから。コーンはいつもの缶詰のやつね？」

「わかったー」

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外は、ひんやりとした空気の漂う秋だった。楓もイチョウもまだ紅葉してはいないようだが、そろそろ枝先が色づきそうな気配を見せている。

夏の初め頃一虎くんに紹介してもらった商店街からの帰り道である並木通りをてくてくと歩きながら、トートバックの中身を再度確認してみた。

(ケチャップ、キャベツ、コーンの缶詰。グリーンピースとソーセージと……よし、頼まれたものはこれで全部っぽい)

あの後下に降りてみたら、あれもこれもと商品を追加されて結局大荷物になってしまっていた。グリーンピースやソーセージを筆頭にそのほとんどがオムライス定番の具材たちでいささか心配になる。

ひょっとするとお母さんはオムライスではなくケチャップライス(ほぼ具材なし)を作る気だったのでは……？お使いに来てよかった。

そうして、ふと、顔を上げたとき

(あれ？)

通りの向こう側を、黒髪金メッシュの男子が歩いていた。もしやの一虎くんでは？

すると途端に心が浮き立って、気がついたときには用もないのにその背中を追いかけていた。今日はまだメールも届いていなければ電話もしていない。ここで会えたことがなんだか嬉しくて急いで道路を渡ると、一虎くんの消えた曲がり角を覗いてあっと声を上げそうになるのを慌ててこらえた。

黒髪ロングの子が、隣りにいたからだ。

(あの子、誰……？)

肩下を長めにとった重めの髪。毛先は、何房かの纏まりになってうねっており、程よくカールさせているのか、それとも単純に癖毛で軽くそうなってしまっているのか、遠くからでは判断しにくかいが、これは一般的に考えて女の子の髪の長さだった。

いけないものを見てしまったような気がして、咄嗟に今曲がった角の裏に隠れた。通行人から自分がどう見られているかはなんとなく想像できたが、今は一虎くんに見つかってしまうことが大問題に思えた。