[ JW ] 恋愛予行演習 [ 桃×黄 ] (ページ5)

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その後スタッフに控え室の利用時間が来た事を伝えられ流れで解散をしたきり、改めて連絡を取ることは無かった。次に顔を合わせるのは数日先になるが、それまであの日のことを悶々と考えなければならないのは億劫だった。別れ際に伝えられた「また今度な」に続く言葉は何が正解なのだろう。また今度「会おう」なのか、「教えて」なのか。教えて、の場合は？またキスをするつもりなのだろうか？

淳太が望むのなら何だってするが、想いを寄せていることを隠して、「そういう」対象として見ていることを底に沈めてああいった練習をするのには罪悪感を覚える。淳太だってこの想いを知って尚続けようとは思わないだろう。嫌悪の色を見せて終わりだ。

淳太の力になりたい。想いを隠したまま練習に付き合って利用するような真似はしたくない。まだ好きだと知られたくない。
矛盾する考えが入り混じって頭がパンクしそうだった。

「小瀧どしたん」
「ん？何も」

珍しく、と言うと失礼かもしれないが、楽屋でも普段のような騒がしさを見せない大毅が声を掛けてくる。メンバーの様子をよく見ている彼に、偶にお兄ちゃんみたいな雰囲気出してくるんよな、なんて思いながら何ともないような軽い調子で返した。

「何か考えごとしとんかな～と思って。珍しく締まりある顔しとるから」
「いっつもキリッとしとるわ俺は」
「え？そやっけ？」

けらけらと喉を鳴らしながら3人掛けのソファなのに態々膝が付くくらい近くへどかりと腰掛けて背凭れへと身体を投げ出す。

「なんかさあ？最近淳太も調子悪そうよなあ？」
「…そうなん？」
「お？食い付いた」

訂正。いつも通り鬱陶しい。間延びした声で探るように紡いだ言葉に思わず反応してしまうと、オモチャを見つけた子供のように、楽しそうに口角を上げながら覗き込んできた。何をどこまで知ってるんだ、此奴は。

「この前映画心配や言うてたから」
「ふうん」
「アドバイスしてんけど、あかんかったんかなと思って」
「別に聞いてへんけど」
「はあ？」
「どしたん？そんな必死に言い訳して」

完全に遊ばれている。察しの良さと、相談にでも乗ってくれるのかと頼り甲斐に感心した気持ちを返してほしい。ペースに乗らされてはダメだと分かっているが、そう思っている時点でもうこの男からは逃げられないのだろうと諦めて溜め息とともにソファへ体重を預けた。