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撮影を終えたところまでのページはクリップで留めているようで、開かれた場所は淳太が言うようにまだ先のようだった。

大人の恋愛が題材のそれは言葉より表情や行動で心の移り変わりを表現する場面が多いらしく、ざっと前後の流し読みをしただけでも難易度の高い演技を要されている事が予測できた。

「原作の小説は読んでんけど、こんなガッツリキスシーンとかなかったんよ。匂わせ的な書き方はしてたけど」
「映画オリジナルでジャニーズのディープキスって凄いな」
「ほんま…よりによってなんで俺やねんな…」

ほんまに。なんで淳太やねん。

作品を通して普段と違うメンバーの一面が世間に知れ渡ることは喜ばしいが、キスは話が別だ。演技だ、仕事だと割り切ったとしてもその経験は記憶としても映像としてもずっと残り続ける。三十数年生きてきた淳太のこれまでの交際相手に嫉妬するほど心が小さいわけでは無いけれど、好きだと自覚してからその相手が得体の知れない女とキスをするなんてあって欲しくなかった。

こんなことなら練習と託つけて本当にキスをして、撮影の時に嫌でも自分を思い出すようにしてやりたい、なんて黒い感情を抱いている時点で充分心が小さいのかもしれない。それ以上に臆病な自分がそんな真似出来るわけないけれど。

「これ、のんちゃんやったらどうやってする?」
「んー、」

淳太の要約を聞く限り、男女4人の複雑な恋心の絡まりが解かれ紆余曲折の末に結ばれた主人公とヒロインが衝動のまま唇を寄せるシーンとのことだった。前後に当てられた台詞は無く、ただ「情熱的なキス」とだけが書かれている。

「とりあえず名前呼ぶかな」
「ほう」
「こう…近付きながら」

相手との身長差を考慮して腰掛けたままの淳太に被さるように近付くと、真剣な表情をした顔を首から支えるように両手で覆い上を向かせる。すっぽりと手中に収まってしまう頭に覚えた掻き立てられる欲は見ぬフリをして、薄く開いたままの唇へ吸い寄せられるように距離を詰めた。

「…淳太、」
「ふはっ、ちょ、俺の名前呼ぶな」
「だって淳太やん」
「相手の役名呼べよ!」

照れたように肩を押して逃げる相手が可愛くてどうしようもない。けらけらと笑いながら「恥ずかし〜」と犬歯を覗かせ、煽ぐ頬は少し赤くなっている気がした。

「こんなんで恥ずかしがっててどうすんねん」
「いや、めっちゃ恥ずかしい!距離感が慣れへん」
「そこからか〜」
「ちょっともう一回来て」

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まーしぃ(プロフ) - 続きがとても見たいです!文章読みやすくてとてもいいです!待っています! (2020年3月12日 4時) (レス) id: 02f2d4472c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みつ | 作成日時:2019年11月29日 15時

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