【JK】ひと夏の泡沫

36 ページ36

.






…怒ればいいのか呆れればいいのか、感情が掻き乱されて分からない。





「ずっと可愛かったけどまた可愛くなった」

『…何それ』

「そんな顔も可愛い」





眉間を人差し指でつんと押される。






「ヒョンのせい？」






愛おしそうな視線に含まれた小さな黒色が瞳の奥で揺らいだ気がした。






『テヒョンのおかげ、でしょ？』

「あーそうだね。
恋すると色気付くってこういう事か」

『それはジョングクも同じでしょ。
相変わらず大学中でモテてるみたいだし？』

「…いやな言い方しないでよ」







ジョングクの人気は同じ学年に留まらず
私の学年まで知れ渡っている。



学内で男友達と一緒にいる所は見たことないけど
女子に囲まれてる所は何度も見た。


ジョングクは自分から話しかけられない極度の人見知りで、サークルにも入ってないし同性の友達も少ない。


いつも一匹狼でいるから余計に女の子が近付いてくるみたい。


人が苦手なジョングクはそれがすごい嫌らしく、いつも私に電話掛けて逃げてる。嫌なら男友達作ればいいのに。








『私の友達もジョングクのことかっこいいって言ってる子いっぱいいるよ？』

「好きな子が俺のこと好きになってくれなきゃ意味ないんだって。」







駅のホームのベンチに座り
膝の上に乗せて抱えている大きな黒いリュック。

その上にぼすんと顎を乗せて「はあ、」とつまらなそうなため息を吐いた。







『…好きな子とは順調？』

「どうだろ。分かんないけど会ったら話すよ」

『へえ、仲良いの？』

「悪くはないんじゃない？」






…ふうん、すごい。
うまくいってるみたいで良かった。

ジョングクなら簡単に付き合えそうなのに
その子との関係はかなり慎重に進んでいるらしい。



それでも最初はまだ仲良くも何ともないって言ってたし、順調にいい方向に向かってるみたい。


『ていうかさ、ジョングクの好きな子ってどんな子なの？』

「あれ、言ってなかったっけ」







今まで一度も聞いたことない。

質問してもはぐらかされてたし。

ジョングクの事を好きになってしまってから
聞かないようにしてたっていうのもあるけど。





「夏が似合う子」

『へえ』

「その子のおかげで嫌いな夏のこと好きになった」

『もっと他にないの？性格とかさ』

「性格かあ。馬鹿みたいにお人好し？」

37→←35

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す