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腕を引かれて身体が傾いた。
よろけた拍子にテヒョンの胸にぶつかって、後頭部に手が回ってくる。トクトクと普通よりも速いテヒョンの心臓の音が聞こえる。
視界は真っ暗で身動きが取れない。
『テヒョン、何して、』
「俺ならAのこと幸せにしてあげられるよ」
『、へ?』
「何があってもAを一番に考えるし、わがままもいくらでも聞くし、辛いことも悲しいこともぜんぶ俺が忘れさせてあげる」
『…、』
「Aがしたいこと、ぜんぶ叶えてあげる」
車内の音楽が何も届かない。
テヒョンの低い声が静寂を切り裂いて
頭の中を支配する。
残酷なほどにぬるく優しい手を
いっそ握り返してしまえば。
『…帰ろ』
「え、?」
『テヒョンの家。帰ろ?』
自分勝手も甚だしい。
私さえ良ければいいなんて許されるはずがないのに。
どろどろの沼に足が引き込まれていく。
でももう何も考えたくなかった。
「…いいの?」
『何でも叶えてくれるんでしょ』
「うん、」
『じゃあ…テヒョンの事しか考えられなくして?』
車が発進した後も、テヒョンと手を繋いだまま。
「……いいよ」
「おれの事以外考えられないようにしてあげる」
.
それからはあっという間だった。
テヒョンの家に着いて、手を引かれて家に入った。
ここからあんまり記憶が無い。
人の視線が届かなくなった途端
テヒョンに抱っこされてベッドに降ろされた。
電気を付けず真っ暗闇の中。
ジョングクよりも何倍も優しくて、甘くて、
それから苦しい。
もう何処にも逃げられない焦燥と
これからどうなるのか分からない不安、緊張、欲望。
ジョングクの事も、
何も考えてられないくらい熱くて仕方ない夜だった。
カーテンの隙間から差し込む陽が眩しくて目を覚ます。
シングルベッドに大人ふたりで寝ていた。
窮屈そうに身体を丸めて、私を抱きしめたまますやすや眠っているテヒョンの髪を撫でる。
「……A、」
『なに?』
小さく呟かれたそれに返事をするけど、テヒョンはまた小さな寝息を立てて寝てる。
引っかき傷がいくつもあるテヒョンの腕。
…え、これ全部私がした?
記憶がなくて自分がどうなってたのか全部わからない。醜態晒してたらどうしよう。
私が見える限り、胸から下に掛けて小さな赤い跡が咲いている。
テヒョンの腕を抜け出して、ぐちゃぐちゃの布団に巻き込まれている衣服を着た。
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chi134340(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。終わってしまって寂しい気持ちもあって複雑…。またてこさんのお話を楽しみにしています。 (2021年9月11日 12時) (レス) id: fae26ba036 (このIDを非表示/違反報告)
JK1223(プロフ) - このお話大好きです…!更新されているとめちゃくちゃテンションが上がります!!下の方のようにテヒョンとうまくいって欲しいと思う反面…グクとグズグズになれーー!とも思ったり…( ; ; )これからも応援してます(*^_^*)頑張ってください!!! (2021年8月31日 22時) (レス) id: f8bf9f9746 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわ(プロフ) - どうかテヒョンを好きになってそのままでいてください! (2021年8月23日 3時) (レス) id: a67dcb29eb (このIDを非表示/違反報告)
えま - もはや切ない。。とっても面白くてハマっています!これからも更新頑張ってください! (2021年8月18日 10時) (レス) id: d6d16a0d4e (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - すごくハマってしまい、Twitterで写真付きでみて、占つくで読み返して噛み締めるという事をしてます笑笑更新楽しみにしてます! (2021年8月17日 15時) (レス) id: 8165b878e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/huumi0000/
作成日時:2021年8月10日 22時