【TH】先生、嫌いです (ページ48)

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･･･タイミング悪すぎる。
なんでこんなとこいるの？と不思議そうに聞いてくる先生から思いっきり目をそらす。

このまま黙って逃げようと思い立った頃にはもう先生に右手を掴まれていた。

『･･･時間が空いたので。本、読みたくて』

「ふふ、ほんとに好きなんだね」

『すみません勝手に』

「全然？好きに出入りすればいいよ。
空き時間の楽しみ方って人それぞれだからね」

へにゃりと顔を崩して微笑む。
伸びかけの前髪が少し目に掛かっていて、邪魔くさそうに指で掻き分けた。

「もうちょっとゆっくりしてく？」

『いえ、邪魔しちゃ悪いですし』

「ちょっと休憩しに来ただけだよ。またすぐ行かないといけないし。なんか飲んでく？」

ふああ、と呑気に大きな欠伸をして中に入っていく。
慣れた手つきでティーポットから紅茶を注いで、はい、と渡された。

手前にある大きなソファに腰掛けた先生。アームレストを背もたれにして、こちらを見つめる。どこに居ればいいのか分からず扉の前に立っていれば、「座らないの？」と首を傾げて可笑しそうに笑った。

「なんかA、借りてきた猫みたい」

『･･･猫って』

「あは、なんか居心地悪そうなんだもん」

『悪いですすごく』

「まあまあ、紅茶あげるから」

なんだそれ。紅茶一杯で懐くいきものなんているのか。
言葉にするのを抑え、紅茶を飲み込んだ。

『わ、おいしいです』

「でしょ？ダージリンティーっていうの。新芽を茶葉にしたちょっといいやつだよ。」

『へえ』

「コーヒー飲めないからこればっか飲んでるんだよね。
Aの口に合ったなら良かった」

確かに先生ブラックコーヒーとか飲めなさそう。
初めて聞いた名前だけど、香りがよくて美味しい。

『先生、ミンジュちゃんは？』

「劇見て別れたよ。人混み疲れて帰ってきちゃった」

『それにしては早いですね』

「ん？そーかな」

心のこもっていないような声で返事が返ってきた。
20分前後の劇だとしても帰ってくるには早すぎる。
本当に人混みが苦手なのか、表情に疲れが伺えた。

「やっぱり静かなとこが一番だね」

『･･･先生って教師向いてるのか向いてないのか分からないですね』

「ね。でも楽しいよ。Aっていう優秀な国語係もできた訳だし」

『完全にパシリですけどね』

「違うよ。おれにとって必要不可欠な存在なんだから」