【TH】先生、嫌いです (ページ47)

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先生が私に好きだと言ったのは、私が先生に興味無いからだ。

せんせいと、生徒。
社会の秩序や常理を教え、教えられる関係。

この揺らぐことの無い関係を逸脱しないことを、先生が望んでる。

せんせいは私に、好きになるなって言ったんだ。

私に向けた冷たい視線は、関係の線引きを理解させるための忠告だったとしたら。

好きじゃ、ない。顔がいいからってちやほやされてる性格悪くて口も悪い、掃除もできない教師なんて。

じゃあ何で今ここにいるの。
＿＿＿＿違う。ウンジン先生の本が読みたかったからだ。

また知らないうちに机の上が本で散乱してる。
こうやって国語係の仕事が増えていくって、わかってないのかな。

左側の棚の右端、下から2番目。
ウンジン先生の小説を1つ抜き出して、先生がいつも座っている大きな椅子に体重を乗せた。

椅子に残る微かな先生の匂い。物置と化した机に、隅に追いやられたように置かれた飲みかけの紅茶。遠くから聞こえる賑わしい声。付けっぱなしのエアコンから流れる空気音が、閑静な部屋に響いている。静かで涼しいはずなのに、煩くて暑くてしかたない。

時計は、午後2時半を指していた。

パラパラとページを捲って読んでみるけれど、文字を視線でなぞっているだけで内容が入ってこない。

･･･やっぱり戻ろう。勝手に一人でいなくなったらジミンやジスに心配掛けてしまうかもしれないし。店の手伝いに行かないと。

＿＿＿＿先生が、ここに戻ってくるかもしれない、なんて。

頭の中が警鐘を鳴らして、咄嗟に立ち上がる。
本を棚に戻して、何かから逃げるように扉を開いた。

廊下に出た途端、何かにぶつかった。

「うわっ･･･A？」

まさか人がいると思ってなかっただろう。
先生はずり落ちた眼鏡を上げて、目をぱちぱちさせていた。