【TH】先生、嫌いです

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『…あ、』






左側の棚の右端、下から2段目。

小説家ウンジン先生の本がずらりと並んでいた。


私の視線を追った先生は、「何かあった？」ときょとんとする。





『…ウンジン先生』


「あぁ、これ？」





腰を上げて、棚の前でしゃがんだ。

人差し指で本の背をつう、となぞって
1冊そこから引き出す。




「好きなの？」


『大好きです』


「いやな趣味してるね」




ぱらぱらとページを捲って流し見して、面白そうに口角を上げた。





『先生も読むんですね』


「まあね。胸糞悪くていつももう一生読まないってなるけど、やめられないんだよね」


『わかります』






先生も本好きなんだな。
そりゃ国語担当なんだから読まないことないか。



ウンジン先生の魅力は、読んで一発目から直ぐに好きになれるというよりは

他の著者さんの本を沢山巡って気付く面白さだと思う。









「＿＿＿＿"僕は月が憎い。

月は朝と一緒に君を連れ去ってしまうから"」






『…』




…あ、それ。

ウンジン先生が有名になったきっかけである代表作
『君影草が泣いた夜』で

主人公を殺した大学生の少年が、自死する間際に発した台詞だ。

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