詐欺師は詐欺師に嘘をつく【テニプリ/仁王雅治】 (ページ7)

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それから、俺らは仲良くなった。

基本、昼休み。互いの部活が空くか、演劇部が休みの時は放課後も、屋上で会った。

本当に、他愛のない話を交わす程度じゃった。それだけでも、俺は別に良かった。

何回も、演劇部にも足を運んだ。やっぱり舞台上のAはいつも見ているAとは違って、そこにいるだけで俺はより一層Aに引き込まれた。

……とはいえ、一度Aにサボリすぎだと咎められてからはそんなに行けなくなってしまったがの。

そんなある日。俺が屋上に行くと、Aはあることを切り出した。

｢ねえ仁王くん、ちょっと練習に付き合ってくれないかな？｣

そう言うAの手には、台本が握られとった。

｢練習？｣

｢うん、定期公演でやる劇のなんだけど……相手役やってほしいの。｣

｢なんでまた俺なんじゃ？｣

｢仁王くんとやってみたいなって思って。私、女詐欺師の役なの。ほら、仁王くんずっと見てたでしょ？｣

聞けば、台本は生徒と顧問が協力して作ったオリジナルらしい。

一匹狼の女詐欺師が、あることから新人警官と知り合い事件にかかわっていく、という内容じゃった。

｢台本は持ってきたから……最後の２ページだけでいいの！……ダメ？｣

｢別に構わんぜよ。Aの演技も間近で見てみたいからの。｣

｢よかった！じゃあ、お願いするね！｣

ぱっと笑って、Aは俺に台本を渡した。

俺が台本から顔を上げた時はもう、彼女は……｢有宮A｣の顔から、｢女詐欺師｣の顔になっていた。