詐欺師は詐欺師に嘘をつく【テニプリ/仁王雅治】 (ページ28)

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そんな、ある日のこと。俺が柳生になり終え、屋上へ向かおうとしとった時。

不意に、誰かと肩がぶつかった。

｢おっと、すみませ……｣

｢あっ、柳生くんっ！｣

ぶつかった相手は、Aじゃった。

タイミングが悪い。なるべく、校内では見つかりたくなかった。

……まあ、見つからんじゃろ。いや、見つからんと信じるしかない。

｢……おや、有宮さん。｣

｢こんにちは！今日も仁王くん探しですか……？｣

｢ええ。ですが彼は勘が鋭いですからね、なかなか見つからなくて。｣

ようやく｢知った｣彼女の名を呼び、仁王雅治を探すふりをする。

少しずつ｢柳生｣と話せるようになってきた彼女は、まだほんのり顔を赤くして俺に言った。

｢あはは、大変ですね。｣

｢まったく……今日こそは捕まえられれば良いのですが……｣

そう言った、その時じゃった。

突然肩に置かれた手。背後から聞こえた、聞きなれた声。

｢仁王くん？私になりすまして、なにをしているのですか？｣

柳生比呂士(俺)を見抜けるやつなんて、一人しかおらん。

だからその声を聞いた時……

背筋が、凍りついた。