詐欺師は詐欺師に嘘をつく【テニプリ/仁王雅治】 (ページ3)

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ひとつひとつの仕草が、美しい。彼女がひとつ動きを見せる度、俺の心は引き込まれていく。

彼女は、一体。

｢ここにいたのか、仁王。｣

ようやく俺の気が戻ったのは、誰かが俺の肩に手を触れた時じゃった。

｢……なんじゃ、参謀か。｣

｢弦一郎がカンカンだぞ。早く戻れ。｣

｢ああ……｣

そう言いながらも、俺の目はまた自然と舞台の上に向かっとった。

｢……？ああ、なんだ。演劇部か。｣

｢ん、ちょいと気になってのう……｣

｢お前があの女主人公役に気がある確率、98％。｣

｢なっ、｣

何気ない口調で切り出した参謀に、俺は思わず泡を食って振り向いた。

やっぱりな、と言ったように口元を緩める参謀は、俺よりも先にまた口を開いた。

｢あそこにいる彼女の名は、有宮Aだ。天性の人を惹きつける力と、根っからの芝居好き……彼女は、紛うことなき天才だ。どんな役でも演じこなし、本当の自分を見せない……通称、｢舞台上の詐欺師｣。｣

｢詐欺師……？｣

｢そうだ。お前と同じ、詐欺師だ。それならば、お前が惚れても不思議ではないな。同じ詐欺師同士、惹かれる物があったのだろう。｣

｢……｣

｢……ともかく、今は部活に戻れ。行くぞ。｣

(……舞台上の、詐欺師……)

何となくそこが引っかかったのは、俺が同じ詐欺師と呼ばれてたからじゃろうか。

それから俺が再び彼女と出会ったのは、舞台下。

いつもの屋上じゃった。