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たまに、練習中にフェンスの向こうを見ると、Aが来とる時があった。
俺に気づくと、小さく笑って手を振る。俺もこっそり、それを見つけては手を振り返した。
……でもそれは、単なる社交辞令。彼女の本心は、違う。
｢きゃあーっ丸井くぅーん！｣
｢赤也くんこっち向いてー！｣
｢幸村様ーっ！｣
騒ぎ立てる外野の中で、彼女は顔を赤らめじっとコートの中を見つめる。
いくら俺がその目を見つめようとしても、決して合うことはない。
｢きゃっ今仁王くんがこっち見てた！｣
｢目が合ったかもー！｣
勘違いして勝手に騒ぐ外野を無視するように、目をそらした。
彼女の、本当の目当ては。
｢柳生くん頑張ってー！｣
｢柳生くーん！｣
外野の声に、思わずまた彼女を見た。
目線の先には、打ち合う柳生。俺には見せたことないような目で、じっと見つめていた。
｢……｣
なんじゃろう、この気持ちは。
苦しくて痛くて、どうしても……見ていられん。
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2015年7月3日 0時
