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｢有宮先輩ー！｣
出入口あたりから、声がした。見ると後輩であろう女子生徒が、Aの名前を呼んでいた。
｢あ、ごめんね今行く！……それじゃ、仁王くん。私後輩と約束あるから……｣
｢ん、またの。｣
軽く手を振って、Aと別れた。
｢ね、有宮先輩。あの人ってもしかしてテニス部の……知り合いなんですか？羨ましい！ ｣
｢そうかな？ふふ、でも確かにすごくいい友達だよ、仁王くんは……｣
遠ざかる声を聞きながら、俺はそこから動けんかった。
水の匂いがした。多分、もうじき雨が降る。
｢……｣
友達、か。
Aの中じゃ、俺はそれ以上の存在にはなれんのじゃろうな……
｢……っ、｣
雨よりも先に、温かいものが俺の手に落ちた。
それが、自分の涙であることに気づくまで、もう少し時間がかかった。
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2015年7月3日 0時
